といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- マンションの又貸しとは
- 購入したマンションを又貸しする危険な3つの理由
- 購入したマンションを又貸しした場合のトラブル事例
- 購入したマンションを又貸ししてしまい、トラブルになったときの対処法
- 購入したマンションを他人に貸すときの注意点
購入したマンションを又貸しする行為は、トラブルのもとになります!
近年ではサブリースマンションのように、事業主がオーナーからマンションを一括借り上げしてエンドユーザーに又貸し(転貸)するというビジネスもありますが、これらはトラブルにならないよう緻密に作られたシステムの下で運営されています。
このような又貸し行為を個人が行うというのは、かなりのリスクが伴うものです。
この記事では、又貸し行為が危険な理由と、トラブル事例、無断又貸しが発覚したときにとるべき行動について、貸主と借主の双方の目線で説明しています。
マンションを貸す予定の人、借りる予定の人に参考にしていただければ幸いです。
マンションの又貸しとは
マンションを含む、不動産の又貸しは、民法では「転貸」と言われていて、民法612条では「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、(中略)賃借物を転貸することができない」との規定があり、転貸行為を原則として禁じています。
さらに無断で又貸しがあったときの措置として、民法612条の2で「賃貸人は、契約の解除をすることができる」と規定されています。
また、マンションを無断で又貸しした賃借人は、契約を解除されて強制的に退去させられるリスクがあるということを理解しなければなりません。
ただし、事前に賃貸人の承諾を得ていれば又貸しすることは可能です。
どうしても又貸しが必要になるという状況であれば、あらかじめそのことを賃貸人に相談し、正式に契約内容に盛り込む必要があります。
購入したマンションを又貸しする危険な3つの理由
ここからは、購入したマンションを又貸しする危険な理由を3つご紹介します。
- 無断又貸しは契約を解除されるおそれがある
- 又借りしていた人は、賃借人に直接義務を負う
- 又貸ししていたマンションが汚損・毀損したときの責任所在の判断が難しい
1つずつ解説していきます。
理由①:無断又貸しは契約を解除されるおそれがある
前述したように、賃借人が無断でマンションを又貸ししたら、賃貸人は契約を解除できるというのが法律の立場です。
もしマンションの無断又貸しが原因で契約が解除されたら、又借りして実際に住んでいた人はその時点で出ていかなければなりません。
そうなると又貸ししていた人は、又借りしていた人から損害賠償請求されるかもしれないというリスクを背負っているのです。
ただし、賃貸人は無条件で解除できるというわけではありません。
判例では「賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」は契約解除できないとされています。
あらゆる事情を総合的に判断し、解除に値するかどうかを判断するということになります。
理由②:又借りしていた人は、賃借人に直接義務を負う
無断で又貸しをすることの危険性について説明しましたが、承諾があった場合であってもトラブルに発展する要素があります。
民法613条によれば、承諾を得た上で又借りしていた人は「賃貸人に対して転貸借(又貸し)に基づく債務を直接履行する義務を負う」とされています。
つまり、承諾済みの又貸しがあったとき、賃貸人は又借りしている人に直接家賃を請求することができるということです。
一方で、又貸し自体も転貸借契約として有効に成立しているので、又貸ししている人も家賃を請求することができます。
賃貸人と賃借人の両方が請求権を持っているということで三角関係のような複雑な権利関係になってしまい、家賃回収に関するトラブルに発展する可能性があります。
理由③:又貸ししていたマンションが汚損・毀損したときの責任所在の判断が難しい
又借りしていた人がマンションを汚損・毀損してしまったとき、誰が原状回復義務を負うのかという問題も生じます。
賃貸人は、又借りしている人と直接の関係はないため、賃借人に原状回復を請求することになります。
このとき、賃借人に「自分のせいで汚損したのではない」とゴネられると厄介な問題になります。
ですが、マンションの汚損が又貸しによるものであっても、賃借人は賃貸借契約に基づく原状回復を負うことになります。
一方で、賃借人は又借りしていた人に対して転貸借契約に基づいて原状回復させることができます。
又貸しした人は両者に挟まれるような形になり、難しいトラブルに発展するおそれがあります。
購入したマンションを又貸しした場合のトラブル事例
マンションの又貸しが、貸主にとっても借主にとってもリスクがある行為だということは理解してもらえたと思います。
ここからは、実際にあった又貸しにまつわるトラブルを紹介したいと思います。
事例①:短期なら大丈夫だろうと思って又貸しした
[事例]Aさんは職場の近くでマンションを借りて居住していましたが、4カ月間の長期出張にいくことになりました。
出張の間、家賃を払い続けるのが大変なので、友人に部屋を又貸しし、家賃を受け取っていました。
又貸しには、期間が短ければいいという決まりはもちろんありません。
たとえ短期間であっても、それが賃貸人に対する背信行為だと認められれば、れっきとした又貸しになってしまいます。
そのため短期又貸しであっても、賃貸借契約自体が解除されてしまう可能性があります。
事例②:彼女と同棲していたら又貸しだと言われた
[事例]Bさんは自分の名義で借りているマンションに彼女と同棲していたところ、賃貸人から又貸し行為にあたると言われ、契約の解除を求められました。
退去に応じる必要はあるのでしょうか。
個人名義で借りたマンションで同棲するというケースは多いのではないでしょうか。
賃貸人に無断で同棲している場合も、又貸しに該当する可能性は大いにあります。
賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がなければ契約を解除されるおそれがあるので注意しましょう。
なお、トラブルになった際は又貸ししていた人との関係性が影響することもあります。
たとえば彼女であっても、それが婚約者という関係であれば判断が変わることもあります。
事例③:自己名義で借りたマンションに家族と同居している
[事例]Cさんは、自分の名義で借りて住んでいるマンションで家族と一緒に生活をしています。
これは又貸しになるのでしょうか。
このときにポイントになるのが、同居しているということです。
高等裁判決では、「親戚の者が同居するとき、使用収益の主体が賃借人から第三者に変更されたと評価できるときは転貸(又貸し)となる」と言われています。
つまりCさんが主としてマンションに生活し続けている状況であれば又貸しにはならないということです。
逆に、Cさんがこのマンションに家族を住ませて、自分自身はほとんど生活していないという事情があるときは又貸しになる可能性があります。
事例④:ルームシェアとしてマンションの1部屋を間借りさせていた
[事例]Dさんは自分名義で借りているマンションの一部屋を友人に間借りさせ、その分の家賃を受領していました。これは又貸しにあたるのでしょうか。
他人に貸していたのがマンションの一部ということであっても、家賃を受領して使用させていたということであればやはり又貸しである考えるのが普通です。
ルームシェアをしたいということであれば、賃貸約契約書の内容として、その人数など明確に記載している必要があります。
特に、複数名とルームシェアすることで払っている家賃よりも収入が大きくなってしまった場合は要注意です。
営業目的と判断され、契約違反に基づく損害賠償請求されるおそれがあります。
事例⑤:本来の用途と違う使い方をしている
[事例]Eさんは居住用として借りているマンションでエステルームを開業し、店舗として利用していました。
営業に伴いマンションには不特定多数の第三者が出入りしています。
これは又貸しに該当するのでしょうか?
不特定多数の人が出入りしているだけでは建物を貸しているということにはならないため、又貸しに該当する可能性は低そうです。
ただし、一般的な賃貸約契約書だと用途(賃貸の目的)が記載されています。
居宅用途として借りているマンションを営業目的で使用した場合は、別の意味で契約違反になる可能性が高いので、又貸しではありませんが結果として解除や損害賠償請求されることがあります。
事例⑥:使用者が個人から法人に変わった
[事例]Fさんは事業用途でマンションを借りて室内で仕事をしていましたが、賃貸借契約中に株式会社Fという会社を立ち上げ、以降は会社としてマンションを利用することになりました。
これは又貸しに該当するのでしょうか。
事業目的で借りている場合は、途中で事業形態が変わるということもあると思います。
この点に関する最高裁の判断としては、賃借人が個人営業を形式上法人組織に改めたにすぎないときは実質的には賃借人に変動がないということで、又貸しには該当しないということになっています。
ただし、法人化に伴ってマンションを利用する人が増えたり、別の人が利用するようになったりすると又貸しに該当する可能性があります。
トラブルを未然に防ぐためには、法人として利用するに至った時点で賃貸人と再契約を締結することが望ましいと考えられます。
購入したマンションを又貸ししてしまい、トラブルになったときの対処法
又貸しが理由でトラブルになったとき、当事者はどのような行動に出るべきでしょうか。
賃貸人・賃借人の目線で考えてみたいと思います。
賃貸人がとるべき行動
貸しているマンションが又貸しされていることが発覚したとき、賃貸人としてとるべき行動は以下の通りです。
①事実確認
又貸しがどのようにして行われていたのか、また又貸しによって具体的にどのような迷惑を被る可能性があるのかということを詳細に確認するようにしましょう。
②契約の解除・明け渡し請求
又貸し行為に「背信行為と認めるに足りない特段の事情」がなければ契約の解除ができます。
この解除には催告は必要ないので、一方的な権利の行使が可能です。
解除するときは内容証明等の書面をもって通知することが望ましいです。
書面を残すことで、あとあと万が一裁判になったときなどに有利に働くことがあります。
また、解除と同時にマンションの明け渡し請求、場合によっては損害賠償請求をできるときがあります。
又貸しによる被害が深刻であれば弁護士への相談をお勧めします。
賃借人がとるべき行動
法律では、無断で又貸しをしてしまった人を救済するような規定は残念ながらありません。
無断又貸しが発覚してしまったときは、速やかに賃貸人に誠意をもって対応し、今後も借り続けたいのであれば新たに契約の締結をしてもらうようお願いするしかない立場です。
賃貸人が迷惑を被ったということで解除・退去を求めてきたときは、受け入れざるを得ない状況だと思います。
そもそも賃貸借契約を締結する時点で又貸しすることの承諾を得ていれば、責任は伴いますが解除されるということはなかったと言えます。
同棲やルームシェアをしたいという特段の事情があれば、事前に相談することでOKしてもらえる物件も多いです。
信頼関係を築くためにも、どういう目的で賃貸借契約を結ぶのかということをお話するようにしましょう。
購入したマンションを他人に貸すときの注意点
購入したマンションを他人に貸すというときに又貸しによるトラブルを防止するため、禁止事項として契約書にきちんと記載し、周知することが大切なポイントです。
賃借人に「又貸しがダメだと知らなかった」と言われる状況をなくすように意識しましょう。
また、信頼のおける不動産会社に賃貸管理を託すということも重要です。
一室のマンションを賃貸するとき仲介料や管理費を浮かせるために自分で契約実務を行うといったケースも多いようですが、賃借人とのトラブルがあったときの対応などを想定すると、プロに任せた方が安心してマンションを貸すことができます。
又貸しを認める契約をしたいときであれば、転貸借契約やサブリースに強い仲介会社に依頼するようにしましょう。
まとめ
賃貸借契約は権利関係が一定期間継続するものですので、貸主と借主の信頼関係の上に成り立っている契約と言えると思います。
その上で、又貸しするという行為は、法律的にも人間関係的にも非常にリスクが大きいということをご理解いただけたと思います。
マンションを借りて自由に利用している立場でいると、又貸し行為に関して気軽に考えがちです。
賃借人は、賃貸人との信頼関係を崩す重大なリスクがあるということを意識しましょう。
また、マンションを賃貸しているオーナーさんは賃借人が契約違反をしないよう、契約内容をしっかり周知するようにしましょう。
賃貸借契約を結ぶときは借主と貸主が双方を思いやり、お互いトラブルにならないための心がけを持つことが大切です。
円滑に賃貸借関係を保つために、契約書の内容をしっかり理解するようにしましょう。
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この記事を書いた人
資格:宅地建物取引士・FP2級・行政書士試験合格
学生時代は不動産業界への強い関心があり、大学では取引関連法を学んでいました。
新卒後すぐに不動産業界に飛び込み、現在は土地売買や相続案件など幅広い実務を担当しています。得意分野は取引法務です。法律の知識をもっと深くしたいという想いから、仕事をしながら独学で行政書士の試験に合格しました。
資格取得によって身に着けた知識と実務で培った経験を活かして、不動産オーナー様のお役に立てるよう日々頑張っています。趣味は旅行。座右の銘は「我以外、皆我が師」
真地 リョウ太(ペンネーム)
30代男性