といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- マンション売却でかかる税金
- 譲渡税の計算方法
- マンション売却時に使える特別控除
- マンション売却で損失が出た場合に使える特例
「マンション売却したら税金が掛かるって本当?」
そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
マンション売却ではさまざまな税金の支払いが発生し、そのうちの一つに「譲渡取得税」があります。
譲渡取得税は、マンション売却での利益に対して課税される税金です。
譲渡取得税について理解しておかないと、売却しても手元にほとんどお金が残らない場合や納税ができない事態になってしまうのです。
また、譲渡取得税は税金を減額するための特例措置も設けられているため、仕組みを知らなければ損してしまう可能性もあります。
そこで、今回は譲渡取得税の計算方法や課税額を抑える特例措置について分かりやすく解説します。
【5分でわかる】マンション売却の流れと費用
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マンション売却でかかる税金
マンション売却では、さまざまな税金が発生します。
どの税金が、いつ・どれくらい掛かるのかを理解しておくことが大切です。
マンション売却で掛かる税金には、次のようなものがあります。
- 印紙税
- 消費税
- 登録免許税
- 譲渡税
それぞれ見ていきましょう。
その①:印紙税
印紙税とは、マンションの売買契約書に課税される税金です。
契約書に記載された金額に応じて課税され、必要金額分の収入印紙で納税します。
印紙税の金額は、次のとおりです。
書類に記載された契約金額 | 税額 |
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
なお、上記は2022年3月31日までの不動産売買契約書の軽減後の税額となります。
例えば、契約書に記載された金額(売却金額)が3,000万円の場合は、1万円の収入印紙が必要になるのです。
印紙税は、売買契約書の作成者(売主・買主)に納税の義務があります。
売買契約書を2通作成してそれぞれが保管する場合は、双方が負担するのが一般的です。
1通しか作成しない場合、多くの場合は売主が負担するケースが多いでしょう。
どちらが印紙代を負担するのかがトラブルの原因となるので、事前に話し合っておくことが大切です。
その②:消費税
不動産売却では、建物に対して消費税が発生します。
土地の場合は、非課税となるため消費税は発生しません。
ただし、建物であっても個人が売主となって売却する場合、消費税は課税されません。
そのため、マンション自体の売却で消費税は課せられないでしょう。
しかし、不動産会社への仲介手数料や司法書士を依頼した場合の報酬には消費税が発生します。
仲介手数料の上限は、法律により次のように定められています。
仲介手数料上限(売却額400万円以上の場合)=売却額×3%+6万円+消費税
例えば、マンションを3,000万円で売却した場合、仲介手数料は96万円となり、消費財が9万6,000円となるのです。
仲介手数料は、上限内であれば不動産会社が自由に設定できますが、基本的には上限ギリギリで設定しているケースがほとんどでしょう。
また、抵当権抹消などに司法書士を依頼する場合の報酬にも消費税が発生します。
司法書士により異なりますが、5万円ほどかかるので消費税も5,000円前後になるでしょう。
その③:登録免許税
抵当権を抹消する場合、登録免許税が掛かります。
これは、マンション売却と同時に住宅ローンを完済する場合に必要な手続きです。
抵当権とは、万が一、ローンの支払いができなくなった場合、不動産を強制的に売却しローンの返済に充てる権利のことを言います。
マンションを住宅ローンで購入する場合、基本的にマンションに抵当権が設定されます。
しかし、抵当権が設定された物件は売買できず、売買するためにはローンを完済し抵当権を抹消する必要があるのです。
基本的には、マンションの売却代金でローンを完済し抵当権を抹消します。
そのため、マンション決済日には「売却代金の受け取り」「ローン完済」「抵当権の抹消」が同時に行われるのです。
抵当権抹消時に必要になるのが、登録免許税です。
登録免許税とは、抵当権を抹消するための手数料のような役割を果たします。
不動産1つにつき1,000円が必要です。
マンションの場合、建物と土地がセットになっているため、合計2,000円が必要になります。
また、抵当権抹消は一般的に司法書士に依頼して手続きするため、登録免許税に合わせて司法書士報酬の準備も必要です。
その④:譲渡税
譲渡税とは、マンション売却の利益に対して課税される税金です。
マンション売却での利益は譲渡所得となり、所得税と住民税が課せられ、これらを譲渡税(譲渡所得税)と呼びます。
譲渡税は、利益に対して課税されるので、利益が出なければ課税されないものです。
しかし、マンション売却の利益の計算方法は複雑で、利益が出ていないと思っていても実は高額な譲渡税が課税されるケースもあります。
マンション売却で発生する税金の中でも、特に大きな割合を占めるのが譲渡税です。
譲渡税について、理解しておかないと損してしまう可能性があるので注意しましょう。
以下では、譲渡税について詳しく解説するので参考にしてください。
譲渡税の計算方法
譲渡税の計算方法は、次のとおりです。
- 課税譲渡所得(課税対象額)=売却額-取得費-譲渡費用-特別控除
- 譲渡税=課税譲渡所得×税率
譲渡税は簡単に言うと「マンションの売却額から経費を引いた利益に税率を掛ける」ことで求められます。
それぞれの詳しい求め方について見ていきましょう。
課税譲渡所得を求める
まず、譲渡税の課税対象となる「利益」である「課税譲渡所得」を求めます。
課税譲渡所得(課税対象額)=売却額-取得費-譲渡費用-特別控除
課税譲渡所得は、売却額からマンション購入に掛かった費用である「取得費」と売却に掛かった費用である「譲渡費用」を差し引いて算出します。
取得費
取得費とは、マンションの購入金額だけでなく購入時の仲介手数料や登録免許税・リフォーム費用なども含めます。
ただし、マンションの購入金額は購入時の金額ではなく、現在の価値に換算した金額となります。
そのため、購入時の金額から築年数の経過に応じて損なわれた価値である「減価償却」を差し引く必要があるのです。
- 取得費=マンション購入代金+購入に関する手数料等-減価償却
- 減価償却=建物価格×90%×償却率×経過年数
償却率は、建物の構造により異なりますが、一般的な鉄筋コンクリート造りマンションの場合、0.015です。
例えば、鉄筋コンクリートマンションを2,000万円で購入し10年後に売却した場合の諸減価償却費は、次のようになります。
減価償却費=2,000万円×90%×0.015×10年=270万円
また、減価償却費用は土地には適用できず、建物のみに適用されるので注意しましょう。
取得費=土地取得費+建物取得費(建物購入額+購入手数料-建物減価償却)
譲渡費用
譲渡費用とは、マンションを場客するために掛かった費用のことを言います。
不動産会社への手数料や税金・リフォーム代金などが含まれます。
例えば、次の場合の譲渡所得を計算してみましょう。
- 鉄筋コンクリート造りマンション
- 購入価格5,000万円(土地2,000万円/建物3,000万円)
- 購入に掛かった経費合計:/200万円
- 所有期間:10年
- 売却価格5,000万円売却
- に掛かった経費合計:100万円
- 減価償却=3,000万円×90%×0.015×10年=405万円
- 取得費=2,000万円(土地)+3,000万円(建物)+200万円-405万円=4,795万円
- 譲渡所得=5,000万円-(4,795万円+100万円)=105万円
よって105万円が利益となり、この額に対して譲渡所得税が課せられます。
上記の場合、5,000万円で買ったマンションを5,000万円で売却しているので、利益が発生しないように一見思えます。
しかし、減価償却などを考慮すると、実は利益が発生し税金を納める必要が出てきてしまうのです。
ただし、上記は特別控除を差し引いていません。
特別控除については、後述するので参考にしてください。
税額を求める
課税譲渡所得を算出したら、その額に税率を掛けることで譲渡税が分かります。
譲渡税=課税譲渡所得×税率
譲渡税は、物件の所有期間に応じて異なり、次のとおりです。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 特別復興所得税 | 合計税率 | |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
譲渡税は、物件の所有期間が5年以下かどうかで税率が大きく異なります。
例えば、譲渡所得が同じ1,000万円の場合でも、物件の所有期間で次のようになるのです。
短期=1,000万円×39.63%=396.3万円
長期=1,000万円×20.315%=203.15万円
このように、納税額が倍近い額になってしまいます。
また、所有期間の判断は、売却した年の1月1日時点が基準となるので注意が必要です。
仮に、2015年5月1日に購入したマンションを2020年6月1日に売却したとしましょう。
実際の所有期間は5年を超えています。
しかし、基準日となる売却した年の1月1日時点では、5年を経過していないため譲渡所得税は短期に税率で課せられるのです。
譲渡所得額や譲渡税の計算は、複雑で間違えやすいものです。
また、納める税金も高額になる可能性があるため、税理士など専門家に相談しながら計算することをおすすめします。
マンション売却時に使える特別控除
課税譲渡所得から差し引ける「特別控除」について詳しく見ていきましょう。
マンション売却では、利益が出ても高額な税金を納める必要があり手元にお金が残らないというケースもあります。
しかし、条件によっては税金を減額できる優遇措置を受けられる可能性があるのです。
その優遇措置にあたるのが、特別控除です。
マンション売却で利益が出た場合、次のような優遇措置を受けられる可能性があります。
- 3,000万円特別控除
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買い替え特例
それぞれ見ていきましょう。
3,000万円特別控除
マイホームとして利用していた物件を売却した場合に適用できるのが「3,000万円特別控除」です。
この特別控除では、マイホームを売却した場合譲渡所得から3,000万円を控除できます。
例えば、売却利益が2,000万円あった場合でも、この控除を適用することで2,000万円から3,000万円を差し引けるため1,000万円の損失となり、税金が発生しないのです。
この特別控除を適用するには、次のような条件を満たす必要があります。
- 居住用として住んでいる自宅の売却であること
- 居住しなくなった日から3年目の年末までに売却すること
- 買主が配偶者や親族などの特別な関係でないこと
- 3年以内にこの特例を適用していないこと
- 他の特例を適用していないこと
また、この特例を適用するには確定申告が必要なので忘れずに申告するようにしましょう。
10年超所有軽減税率の特例
譲渡税を軽減するための特例として「10年超所有軽減税率の特例」もあります。
この特例では、10年以上所有したマイホームの売却の場合、課税対象譲渡額に乗ずる課税率を軽減できます。
適用後の税率は、次のようになります。
売却額 | 所得税 | 住民税 | 税率合計 | |
6,000万円以下 | 10.21% | 4% | 14.21% | |
6,000万円超 | 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
売却額が6,000万円以下の部分で税率が大きく軽減されるので、納税額も大きく減額できます。
10年超所有軽減税率の特例と受けるには次のような条件があります。
- 居住用として住んでいる自宅の売却であること
- 居住しなくなった日から3年目の年末までに売却すること
- 譲渡した年の1月1日時点の所有期間が10年を超えていること
- 買主が配偶者や親族などの特別な関係でないこと
- 3年以内にこの特例を適用していないこと
- 他の特例を適用していないこと
10年超所有軽減税率の特例は3,000万円特別控除と併用できるので、大きな節税効果が見込めるでしょう。
特定居住用財産の買換え特例
この特例は、マイホームを買い替えた場合に譲渡税を将来に繰り延べできる制度です。
所有期間が10年を超えるマイホームを売却して買い替えをした場合で、売却額よりも購入した家の金額が大きい場合に適用できます。
この制度を適用すると、譲渡税の支払いは新しく購入した家を売却する時まで猶予できるのです。
買い替えの場合、譲渡税を支払ったうえで新しい家の購入費用も負担するとなると大きな負担になります。
その負担を軽減するために、譲渡税の支払いを猶予してくれるのがこの制度なのです。
この制度を適用するには、次のような条件を満たす必要があります。
- 居住用として住んでいる自宅を売却し新しく購入する場合
- 売却額が購入額よりも少ない場合
- 居住しなくなった日から3年目の年末までに売却すること
- 譲渡した年の1月1日時点の所有期間が10年を超えていること
- 買主が配偶者や親族などの特別な関係でないこと
- 3年以内にこの特例を適用していないこと
- 他の特例を適用していないこと
ただし、新しく購入する物件には面積や価格などの制限があります。
この特例は、税金の軽減ではなく猶予になります。
現在は税金を支払う必要がなくなりますが、その分将来新しく購入した物件の譲渡税とまとめて納税しなければならないので注意が必要です。
また、この特例を適用すると3,000万円特別控除を適用できません。
どちらを適用すればいいのかをしっかり判断したうえで、活用するようにしましょう。
いずれの控除を適用する場合でも、確定申告が必要です。
適用条件など複雑になるので、専門家に相談のうえ確定申告することをおすすめします。
マンション売却で損失が出た場合に使える特例
マンション売却では、損失が出た場合は課税されないため、確定申告も不要です。
しかし、損失が出た場合も確定申告することで、優遇を受けられる場合があるのです。
損失が出た場合に利用できる特例には、次の2つがあります。
- 居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
その①:居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
損失が出た場合に利用できる特例の一つが、「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」です。
この控除では、マイホームを売却した額で住宅ローンを完済できずに損が出た場合に適用できます。
この控除を適用することで損失分を損益通算・繰越控除が可能になるのです。
損益通算とは、マイナスの所得を他の所得と相殺して申告できる制度です。
例えば、売却で400万円のマイナスがあり、給与所得として500万円ある場合、相殺した100万円を確定申告します。
本来の所得よりも所得額が減少することで、所得税の還付や住民税の減額につながるのです。
また、相殺し切れなかったマイナス分は、3年に渡り繰越できるのが繰越控除です。
売却で1,000万円のマイナスになり、給与所得が300万円の場合、次のようになります。
- 1年目:300万円-1,000万円=-700万円(損益通算)
- 2年目:300万円-700万円(繰越控除)=-400万円
- 3年目:300万円-400万円(繰越控除)=-100万円
- 4年目:300万円-100万円(繰越控除)=200万円
上記のように、3年目までは所得がマイナスになるので所得税・住民税が課税されません。
4年目も本来の所得よりも低い額で申告できるので、所得税・住民税の節税が見込めるのです。
ただし、3年繰り越して相殺しきれない分は翌年以降には繰越せません。
この特例を適用するには、次のような条件があります。
- 居住用として住んでいる自宅を売却し損失が出ていること
- 売却した日の前日時点で10年を超える住宅ローンの残高があること
- 居住しなくなった日から3年目の年末までに売却すること
- 譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていること
- 買主が配偶者や親族などの特別な関係でないこと
- 3年以内にこの特例と他の特例を適用していないこと
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
損失が出た場合に、適用できる控除には「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」もあります。
この控除は、マイホームを売却し新しく住居を購入した際の売却損が出た場合に適用できます。
この控除でも、損失の損益通算・繰越控除が可能になるのです。
適用条件としては、次のようなものがあります。
- 居住用として住んでいる自宅を売却し損失が出ていること
- 譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までに新しい住宅を購入していること
- 居住しなくなった日から3年目の年末までに売却すること
- 譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていること
- 買主が配偶者や親族などの特別な関係でないこと
- 3年以内にこの特例と他の特例を適用していないこと
このように、マイナスが出た場合でも、確定申告することで大きな節税効果があるので、確定申告するとよいでしょう。
まとめ
マンション売却での譲渡税について計算方法や節税方法についてお伝えしました。
マンション売却では、利益が発生すると譲渡税が課せられます。
不動産取引は高額になるケースが多く、譲渡税も高額になる可能性があるので、納める税金の額を把握しておくことが重要です。
マイホーム用のマンションの売却では、特別控除を適用することで譲渡税を抑えられる可能性があるので、条件を確認して活用することが大切です。
ただし、譲渡税の計算や特例の適用などは判断が難しいので専門家に相談しながら進める必要があります。
この記事を参考に、譲渡税について理解したうえで少しでも利益を残せるようにマンション売却を進めていきましょう。
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この記事を書いた人
資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)
地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。
逆瀬川勇造
30代男性