といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 日本は「地震大国」
- 新耐震基準と旧耐震基準
- マンションの「耐震性」にも種類がある
- 地震に強いマンションの特徴
- 地震に対してのリスクヘッジ
マンションを購入するとき、建物の地震に対する強度が心配だと言う人は少なくありません。
建築された時期や、建築工法、地盤などによって耐震性能は異なるので、購入予定のマンションの状況をチェックしておきたいところです。
また、震災が発生したときのことを想定した準備をしておくことも重要なポイントです。
マンション購入前に理解しておきたい地震の話について解説していきます。
日本は「地震大国」
日本は言わずと知れた「地震大国」です。
その理由は国土の位置にあります。
日本の国土は、地震の原因となる海溝(プレートとプレートの境界)に沿うように位置しています。
統計によると日本国内において1年あたりで発生するマグニチュード6.0以上の地震回数は16回と観測されており、高頻度で地震が発生していることが分かります。
歴史を振り返っても、日本では震災によって幾度となく大きな被害を被ってきました。
震災が発生するたびに地震に対する建物の強度について考えなおされ、建築に関する法令・規制がバージョンアップされてきました。
そして、昨今の日本の建物は、世界的に見てもトップクラスの強度を誇っています。
新耐震基準と旧耐震基準
日本の建築基準法には、「耐震基準」という考えがあります。
耐震基準は、簡単に言うと「大地震に耐えるために一定以上の強度を保つように建物を建築しなければならない」と定められた技術的な基準です。
建物を建築するときは、耐震基準を守った設計のものでなければなりません。
耐震基準には、「旧耐震基準」と「新耐震基準」というものがあります。
旧耐震基準
日本でかつて採用されていた耐震基準のことを総称して「旧耐震基準」と呼びます。
そもそも建築基準法という法律ができたのは1950年と歴史は古く、このときには既に「耐震基準」という技術的な基準が法律に盛り込まれていました。
しかし旧耐震基準では「建物の重さの20%に相当する地震力に耐えられること」「震度5程度の地震で建物が倒壊しないこと」などの基準にとどまり、震度6~7程度の地震で建物が倒壊するリスクについては考慮されていませんでした。
現在施行されているものに比べると甘い基準だったということになります。
その後、1978年に発生した宮城県沖地震によって多くの建物が倒壊するという甚大な被害が発生する事態に見舞われました。
旧耐震基準によって造られた建物の倒壊も多く見られました。
この災害をきっかけに、建物の地震に対する強度というものが改めて見直されることとなります。
新耐震基準
1978年に発生した宮城県沖地震における建物倒壊の甚大な被害を受け、1981年6月には建築基準法の施工例が大きく改正され、このときに新しくできた耐震基準が「新耐震基準」と呼ばれています。
新耐震基準では、建物を造るときは「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6~7程度の大規模地震でも倒壊は免れるもの」でなければならないという技術的な基準が求められるようになりました。
このような法改正のいきさつがあり、現在、市場で取引されている中古マンションにおいても、建物の新築年月日が1981年以降の新耐震基準によって建築されたか否かによって、資産価値に大きな影響を及ぼすことがあります。
なお、1981年6月に建築された建物は2021年時点で築40年になります。
- 1981年6月改正の建築基準法施行令による耐震基準を新耐震基準という
- それ以前の基準を総称して旧耐震基準という
耐震診断を受けたマンション
旧耐震基準時代に造られた建物に関しては、耐震診断を受けることが推奨されています。
耐震診断は旧耐震基準時代に造られた建物の耐震性を評価する制度で、現在の基準と比較したときにどれくらいの耐震性があるのかということが検査されます。
築年数が古いマンションは耐震診断を受けることが望ましいのですが、診断を受けることに法的義務はなく、実際の耐震診断の実施率は決して高い数字とは言えません。
中古マンション市場においては耐震診断がなされていない物件は非常に多いので、購入前に注視するようにしましょう。
耐震改修工事を実施したマンション
耐震診断によって「耐震性能に問題がある」と診断されても、改修工事を実施することで耐震性能を向上させることができます。
しかし、改修工事は一戸当たり500~1,000万円ほどの費用がかかると言われており、管理組合の修繕積立費では賄いきれないケースがほとんどです。
そのため旧耐震基準時代に造られたマンションで耐震改修工事を実施できているマンションはほんのわずかとなっています。
自治体によっては、耐震診断や耐震改修工事に対して助成金を出しているところもありますが、耐震化未実施の物件はまだまだ多いというのが当面の課題になっています。
マンションの「耐震性」にも種類がある
新耐震基準になってからは、マンションの耐震性は高くなっており、倒壊するリスクは格段に少なくなっています。
マンションの地震に対する強さには「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の三種類があり、それぞれの構造には違った特徴があります。
耐震性とは
耐震性は、大きな地震を受けても建物が倒壊せずに耐える性能のことを言います。
耐震性が高いマンションは頑丈で壊れにくいという特徴がありますが、強固に作られているゆえに建物の室内は揺れやすいという側面も持っています。
耐震性が高いマンションであっても、住戸内では家具や家電が倒れないように対策する必要があります。
制震性とは
制震性は、地震が発生したときに建物の揺れを早めに抑えられる性能のことを言います。
建物構造の中に筋交いやタンパーを設置することで揺れに対するブレーキの力が働き、制震性が高まります。
耐震構造のみの建物と比べると建築コストが高いというデメリットはありますが、震災への意識が高まる昨今の情勢において注目されている施工法の一つになっています。
免震性とは
地震によって発生する揺れる力を建物の外に受け流すことで揺れが感じにくくなる性能のことを「免震性」と言います。
土地・建物の接着部分を可動式にすることで、地震が起こったときに建物は同じ位置にとどまるようにし、免震性を高めるという工法です。
免震構造の建物であれば、地震の際に室内にいてもほとんど揺れを感じることがありません。
ただし免震構造の建物は一般的な建物と比べると建築コストが高くなるため、導入事例としてはあまり多くはありません。
揺れが大きく感じやすい高層マンションでは免震構造が採用されていることもありますので、購入前に確認してみましょう。
地震に強いマンションの特徴
地震に強いマンションにはどのような特徴があるのでしょうか。
購入前に確認しておきたいポイントについて説明します。
地盤が強固
マンションが建っている地盤の強さも、地震に対する強度に影響します。
地盤が弱いと、大きな地震によって地面が液状化してしまったり、最悪なケースでは建物が傾いてしまったりすることもあります。
地盤が弱い土地にマンションを建てるためには、建物の基礎から地中の支持層と言われる強固地盤まで杭を打ち、その上に建物を造らなければなりません。
古いマンションを購入するにあたっては、周辺の地盤の強度を確認する必要があります。
大手地盤調査会社のジャパンホームシールドが運営する「地盤サポートマップ」では、周辺の地盤強度をある程度確認することができますので、活用してみましょう。
ジャパンホームシールド
近隣に地盤調査会社があれば調査データが残っていることがあり、より具体的な回答が得られる場合があるので、相談してみるのもいいと思います。
また、管理組合に図面が残っているのであれば、当時の地盤調査結果や杭工事の実施状況を確認するようにしましょう。
建物の構造や設計状況
建物の構造や設計の状況も強度に影響することがあります。
鉄筋コンクリートの構造は、大きく分けると「壁式構造」と「ラーメン構造」の二種類があります。
壁式構造
壁全体が耐力壁となっており、建物を「面」で支える箱のような構造のことを壁式構造と言います。
壁式構造のマンションは耐震性に優れていますが、基本的には低層の建物でしか採用できないという特徴があり、中高層のマンションにおける採用事例はあまりありません。
また、各階の壁が構造体の一部となっているので、将来リノベーションをするときに間取りの変更などができないというデメリットもあります。
ラーメン構造
柱や梁が骨組みのように入り組んで建物を支えている構造のことをラーメン構造と言います。
設計の自由度が高いことから多くのマンションでラーメン構造を採用していますが、壁式構造に比べると耐震性はやや劣ります。
ただし、柱や梁の太さや、柱同士の距離(スパン)、杭工事の内容によって耐震性を高めることは可能です。
また、新耐震基準以降にできた建物においては厳しい基準に則って強固に造られているため、ラーメン構造だからといって耐震性が低いという訳ではありません。
地震に対してのリスクヘッジ
地震がきたときのための心構えとして、何に注意しておくべきでしょうか。
ここからは、大地震が来たときのために今できることについて考えたいと思います。
地震保険への加入
マンション購入時に加入する火災保険は、地震による損害に対しては保険金が支払われません。
それだけではなく、地震を起因として発生した火災や、津波による水災にも火災保険は適用できないことがほとんどです。
震災にあったときの金銭的な損失をカバーするためには、火災保険とは別の「地震保険」に加入しておく必要があります。
火災保険とセットで加入できる地震保険もあり、同時に加入することで割引される保険商品もありますので、火災保険に入るタイミングでの同時加入をお勧めします。
防災グッズの準備
いつ災害が発生しても迅速に対応できるよう、防災グッズを常備しておくことも重要です。
非常用持ち出し品として、以下の物を家族の人数分を常に準備しておくようにしましょう。
非常用持ち出し品
避難用具
- 懐中電灯
- 携帯用ラジオ(発電機能付きのものが望ましい)
- 乾電池
- ヘルメット(または防災頭巾)
生活用品
- 手袋
- ブランケット
- 缶切り
- ライター、マッチ等
- ナイフ
- 携帯用トイレ
救急用具
- 救急用具一式(処方箋、胃腸薬、風邪薬、持病の薬)
- 生理用品
非常食品
- 乾パン
- 缶詰
- 栄養補助食品
- 飴やチョコレートなど
- 飲料水
衣服
- 下着、靴下、上着、ズボンなど
- 防寒ジャケット
首相官邸のオフィシャルサイトにて、各家庭でできる災害対策について詳しく掲載されていますので参考にしてください。
災害時の避難経路の確認
災害があったときはどこに避難するのか、あらかじめ把握しておくことも重要なポイントです。
各地域の自治体が作成している「ハザードマップ」は、これまでの災害頻度などから今後発生するリスクをマップ上に表した資料です。
購入予定のマンションが建っているエリアがハザードマップ上で何らかの災害警戒エリアになっていないか確認することができます。
また、自治体が災害時の避難経路を指定した「防災マップ」を作成していることもありますので、ハザードマップと合わせて確認するようにしましょう。
なお、ハザードマップには以下の種類があります。
ハザードマップの種類
- 震災ハザードマップ
- 津波ハザードマップ
- 洪水ハザードマップ
- 火山ハザードマップ
その他にも土砂災害や高潮、水災に対応したハザードマップが作られている場合もあります。
お住まいのエリアの災害リスクに応じて自治体が各ハザードマップを準備していますので、すぐわかる場所に保管しておくようにしましょう。
全国のハザードマップが集約された「ハザードマップポータルサイト(国土交通省)」で簡単に地域の情報を確認することができますので、参考にしてください。
ハザードマップポータルサイト
まとめ:マンション購入前に地震に強いかどうかチェックしておきましょう!
日本に住んでいる以上、どこにいても地震災害のリスクはあります。
しかし、もしもの時のことを想定して行動することで、その被害を最小限に減らすことができます。
マンションの購入においても、耐震性を考えて物件を選定することや、災害に対するリスクヘッジをとることで守れる命があります。
専門家からは各エリアにおいて大地震が発生するリスクが各地域で叫ばれていますが、きたるべき時に備えて、今からできる対策をとることが大切です。
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この記事を書いた人
資格:宅地建物取引士・FP2級・行政書士試験合格
学生時代は不動産業界への強い関心があり、大学では取引関連法を学んでいました。
新卒後すぐに不動産業界に飛び込み、現在は土地売買や相続案件など幅広い実務を担当しています。得意分野は取引法務です。法律の知識をもっと深くしたいという想いから、仕事をしながら独学で行政書士の試験に合格しました。
資格取得によって身に着けた知識と実務で培った経験を活かして、不動産オーナー様のお役に立てるよう日々頑張っています。趣味は旅行。座右の銘は「我以外、皆我が師」
真地 リョウ太(ペンネーム)
30代男性