といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 「共有」とは?
- 夫婦でマンションを購入するときの注意点
- 親から住宅購入資金の援助を受けるときの注意点
家族と共有の名義でマンションを購入することを考える人は多いと思います。
共有名義で登記するときに考えなければならないのが「持分割合」です。
たとえば共有者が夫婦であるときは二分の一ずつの持分で登記するというケースが多いと思いますが、購入資金の負担割合と持分割合に相違があれば、課税対象になってしまうことがあります。
持分割合を決めるときはどのような点に気を付けなければならないのでしょうか。
「共有」とは?
「共有」とは、一つの物を複数の人が所有している状態のことを言います。
一般的には夫婦や親子などの家族でマンションを購入するときなどに共有名義で登記を行いますが、マンションを共有名義で購入すると次のようなメリットがあります。
メリット①:住宅ローンの審査で有利になる
共有名義でマンションを購入する際、銀行は共有者全員の年収を合算して返済負担率を算出します。
夫婦の共有名義でマンションを購入する場合は世帯年収に対する返済負担率が見られることになるので、共働き世帯であれば単独の収入で申し込むよりも有利になります。
メリット②:共有者それぞれが住宅ローン減税を受けられる
マンションを共有で購入することで、共有者それぞれが住宅ローン減税を受けられます。
例えば住宅ローンの残高が4,000万円だった場合はその1%の40万円が控除の上限額となりますが、所得税と住民税が40万円に満たなければ住宅ローン減税のメリットを満額受けとることができません。
ところが夫婦共有名義でマンションを購入すればそれぞれが住宅ローン減税を受けられますので、単独で控除を受けるよりも減税額が大きくなります。
メリット③:マンションを売却する際は共有者全員の同意が必要
不動産を共有している場合、共有者単独ではその不動産を売却することができず、原則として全員の同意がなければなりません。
人によっては全員の同意がないと売却できないというのが面倒くさいと思うかもしれません。
しかし、家族で住むために購入したマンションは、共有名義であっても単独名義であっても実質的には家族の財産です。
当たり前のことかもしれませんが、共有名義で登記することで「売却をするなら双方が納得してから」という約束事を、法律を根拠に交わすことができます。
メリット④:将来の相続対策になることがある
夫婦でマンションを共有することで一人当たりの資産総額を減らすことができるので、将来の相続税対策になります。
財産を夫婦で分割して所有することで資産総額が基礎控除内に収まり、結果的に非課税になるケースもあります。
このように、マンションを共有名義で購入することでいくつもメリットがあります。
しかし、一つの不動産を夫婦で共有するときは「持分」の割合に気を付けなければデメリットに転じることもあります。
持分割合を決める際は、何に気を付けるべきなのでしょうか。
持分とは
複数人で不動産を共有するとき、それぞれの共有者は自分の「持分割合」を所有することになります。
実際の不動産登記簿には、以下のように共有の内容について記載されます。
共有者
〇〇県〇〇市〇〇 〇番〇号
持分2分の1
〇田 〇夫
〇〇県〇〇市〇〇 〇番〇号
持分2分の1
〇田 〇子
この、「2分の1(50%)」というのが、それぞれの共有者の持分割合です。
持分割合は必ず均等でなければならないというわけではなく、たとえば80:20や10:90など、当事者間で自由に割合を決めることができます。
ちなみに、持分割合に差があったとしてもマンションを利用する権利の大きさに強弱が付くわけではありません。
民法では「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた利用をすることができる」と規定されています。
例え、一方の共有者が持分割合を10%しか持っていなくても、持分を持っている以上はマンションの全体を自由に使うことができるということです。
では、持分割合は何のために決めるものでしょうか。
簡単に言うと、民法上の持分は共有物に対する「議決権」のような機能をもっています。
たとえばマンションを他人に賃貸するとなったとき、共有者の持っている持分価格の過半数分の同意が必要とされています。
この規定によれば、持分割合が90:10だった場合は90の持分を持っている共有者は単独で賃貸に出せるということになります。
一方で、50:50であった場合は、二人が同意しなければ賃貸に出すことができません。
このように、共有の目的物であるマンションに対して何らかの変更行為をするときに議決権として持分が用いられることになるのです。
ですが、夫婦で所有しているマンションであれば、仮に第三者に貸すとなった場合でも持分割合に関わらず、相談して決めるケースがほとんどだと思います。
普通に生活していく上では、持分割合の差が日常に支障を来たすということはほとんどありません。
夫婦でマンションを購入するときの注意点
共有名義でマンションを購入するときにはどのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。
持分割合の決め方について基本的な考え方を解説します。
住宅ローンの債務の割合
共有するマンションの持分割合を決める上でもっとも気を付けなければならないことは、費用を負担した割合と整合性がとれるようにしなければならないということです。
もしも費用負担割合と持分割合に差異があれば、その差額分は贈与があったとみなされて課税対象の扱いになることがあります。
たとえば夫婦がペアローンを組んで3,000万円のマンションを購入するとき、二人の収入の差を鑑みて、夫が2,000万円のローンを組み、妻が1,000万円のローンを組んだというケースがあったとします。
このケースにおいて持分割合を決めるとき、実際の債務の負担の割合を考慮し[夫2:妻1]という持分割合で登記することが望ましい形です。
しかし、ここで[夫50:妻50]と均等な持分割合で登記してしまうと、税務署から「夫から妻に対して住宅購入資金の贈与があった」とみなされて、贈与税の対象になってしまう可能性があります。
購入代金のうち、一部自己資金を出す場合であっても、その現金は誰のものかということを考慮する必要があります。
購入資金3,000万円のうち1,000万円を夫の個人財産から捻出し、残り2,000万円に対して夫婦で連帯債務の住宅ローンを組むとなった場合、夫2,000万円(自己資金1,000万円+借入れ1,000万円)、妻1,000万円(借入れ)に相当する持分割合を考えなければならず、持ち分割合は[夫2:妻1]が望ましい比率となります。
一方で、自己資金1,000万円が夫婦の財産だと言える場合は、50:50でも問題ありません。
住宅ローンを借入れしてマンションを購入する場合においては、「誰がいくら負担したのか」ということを根拠に、持分割合を決めなければならないということに気を付けましょう。
団体信用生命保険
団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済者が死亡したり、一定の病を患ったりすることで返済ができなくなってしまったときにローンの残高が保険金から支払われるというものです。
住宅ローンを借入れするときは、団体信用生命保険に加入するケースがほとんどだと思います。
この団体信用生命保険に加入するにあたって、連帯債務であれば保険金の割合を定める必要があります。
たとえば保険の割合を夫50:妻50としていた場合、夫が死亡したときはローン残債務の50%が妻に残ることになります。
一方で夫90:妻10としておくと、夫が死亡したときは残りの10%が妻に残りますが、妻が先に死亡した場合は90%が夫に残ることになります。
団体信用生命保険は、もしものときの保険です。
夫婦それぞれの収入を考慮し、一方の身に万が一のことがあったとしても、残された方が無理なくローンを支払っていけるよう、話し合って割合を決めることが大切です。
親から住宅購入資金の援助を受けるときの注意点
親から住宅資金の援助を受けるというケースも多いと思います。
援助を受けるときに気を付けるべきポイントについて説明します。
原則、「共有」でなければ課税対象となる
親から住宅購入資金の援助を受けたとき、その金額に相当する持分を親が取得しなければ、原則として現金の贈与があったとみなされてしまいます。
しかし、将来の相続のことや権利関係を考えると、実際に住んでいない親を共有者にしておくことは得策ではありません。
住宅購入資金の援助を受けても相続税が課税されない方法と注意点について紹介したいと思います。
非課税制度を利用する
贈与税においては、一定の条件を満たせば非課税になる制度がいくつかあります。
代表的な非課税制度について紹介します。
暦年課税の基礎控除
贈与を受けた目的に関わらず、1年あたり110万円までの贈与は課税対象になりません。
相続対策として生前中に推定相続人に現金を移動したい場合、毎年110万円ずつ小分けにして贈与していき相続財産を少しずつ減らしていくという対策を立てている人もいるようです。
ただし、生前贈与は被相続人が死亡したときから過去3年分は相続財産の一部とみなされるので、一部相続対策にならない場合もあります。(参考:【国税庁】贈与税の計算と税率(暦年課税))
住宅取得資金等贈与の非課税枠
直系尊属(親や祖父母)から住宅資金等の贈与を受けた場合、一定の金額が非課税になる制度が「住宅取得資金等贈与の非課税制度」です。
令和3年4月以降に売買契約を行った住宅にかかる資金贈与の場合、一般的なマンションであればもらった額の700万円(個人が売主の場合は300万円)までは非課税枠が使えます。(省エネ住宅などの良質なマンションである場合は、非課税枠がさらに大きくなることもあります。)
また、この特例は暦年課税の基礎控除と併用することもできるので、非課税枠が700万円であれば基礎控除110万円と合わせた810万円までは贈与税がかかりません。(参考:【国税庁】直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、生前で起こった贈与のうち2,500万円までは相続時に繰り延べできるという制度です。
相続時精算課税制度を使うと、贈与があった時点では贈与税の課税対象にはなりませんが、被相続人が亡くなったときの相続財産に加算されることになります。
ただし、相続時精算課税は暦年課税の基礎控除枠との併用ができないということに注意しましょう。(参考:【国税庁】相続時精算課税の選択)
上記の非課税制度をうまく活用することで、親子間の持分割合を気にすることなく親から資金援助を受けることができるようになります。
借入金として援助を受ける
親から受ける贈与の額が大きく、非課税枠に収まらないということもあると思います。
その場合は、住宅資金の贈与を受けるのではなく「資金を借りる」という方法で援助を受ける方法もあります。
あくまで親から資金を借りているのであれば課税対象にはなりません。
親から個人融資を受けた場合であっても、暦年課税の非課税枠は従来通り使えますので、返済期間中に毎年110万円をもらってそのまま返済に充てるという方法もあります。
ただし、親から住宅購入資金を借りる場合は、借用書などの書面や入出金履歴などを確実に残していく必要があるということに注意しなければなりません。
手順を誤ると、税務署の立入り調査が入ったときに適切な説明資料がないということで課税対象とみなされ、最悪な場合では追徴課税が発生することもあります。
夫婦の一方の親からの資金援助があったとき
夫婦の一方の親から住宅購入資金の贈与があった場合は、もらった金額は贈与を受けた子供本人の財産として夫婦間の持分割合を決めなければなりません。
例えば3,000万円のマンションを購入するとき、1,000万円については夫の親から贈与を受け、残りの2,000万円については夫婦で連帯して住宅ローンを組むというケースがあったとします。
親からもらった1,000万円は、あくまで夫の親から夫に対しての贈与という扱いでなければ非課税制度を使うことができません。
夫は現金1,000万円+ローン1,000万円を負担していることになり、妻は残りの1,000万円のローンを負担しているということになります。
このケースにおいてマンションの持分割合を決めるとき、持分割合は[夫2:妻1]が望ましい形となります。
贈与税の非課税枠を有効に使うために、夫婦一方の親から贈与を受けた場合は「誰がもらった財産なのか?」ということを明確にしたうえで持分割合を決めるようにしましょう。
まとめ
共有名義でマンションを購入するとき、均等に二分の一ずつの持分で登記するケースが圧倒的に多いと思います。
しかし、一方の親から住宅購入資金の贈与を受けるというケースや、住宅ローンの債務の割合が夫婦で偏りがあるというケースも一般的に起こりうることです。
そうなった際、持分割合を単純に[50:50]にするのではなく、「これって課税対象になるのでは?」と少しでも思い出していただければと思います。
思わぬところで課税対象の要件となってしまうことがないよう、制度内容をしっかり理解した上で持分割合を検討するようにしましょう。
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この記事を書いた人
資格:宅地建物取引士・FP2級・行政書士試験合格
学生時代は不動産業界への強い関心があり、大学では取引関連法を学んでいました。
新卒後すぐに不動産業界に飛び込み、現在は土地売買や相続案件など幅広い実務を担当しています。得意分野は取引法務です。法律の知識をもっと深くしたいという想いから、仕事をしながら独学で行政書士の試験に合格しました。
資格取得によって身に着けた知識と実務で培った経験を活かして、不動産オーナー様のお役に立てるよう日々頑張っています。趣味は旅行。座右の銘は「我以外、皆我が師」
真地 リョウ太(ペンネーム)
30代男性