不動産投資

不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?

不動産投資で減価償却って活用できるのでしょうか?節税の方法も教えてください。

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 不動産投資で活用した減価償却とは?
  • 減価償却で節税するメリット
  • 減価償却における節税の注意点
  • 保有時の税金の計算方法
  • 売却時の税金の計算方法

不動産投資では「減価償却」を活用することが重要です。

減価償却を上手に利用することで、節税などのメリットを受けられます。

しかし、減価償却は計算が複雑になり、活用方法を間違えると節税できないだけでなく逆に税金が高くなる可能性があるのです。

とはいえ、これから不動産投資を検討している方の中には、減価償却についてよく分からないという方もいるでしょう。

そこで、この記事では減価償却の基本や計算方法・注意点を分かりやすく解説します。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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不動産投資で活用した減価償却とは?

不動産投資で活用した減価償却とは?

「不動産投資で節税できる」という話を耳にした方もいるでしょう。

不動産投資が節税できる大きな要因が、「減価償却」です。

減価償却は、実際の出費を伴わない経費と言う特徴があります。

そのため上手に活用することで、手元に利益を残しつつ会計上経費計上でき、利益を抑え税金を小さくできるのです。

ここでは、減価償却の概念についてまず確認していきましょう。

建物の劣化分を数年に渡って償却できる制度

建物は時間の経過に伴って劣化し価値が減少する資産です。

その減少した資産を経費として計上する会計上の処理のことを、減価償却と言います。

建物と言った資産は、一度使ったからと言って価値が大きく損なわれるものではありません。

しかし、長年使用することで価値は徐々に減少していくものです。

また、長年使用する予定の資産を購入した年のみで経費計上すると、その年のみの経費が大きくなり赤字になってしまいます。

そのため、そのように長期間使用する資産については、購入した年に経費計上するのではなく、一定の期間で案分して経費計上するのです。

土地に減価償却はない

長期間使用する資産ではあっても、土地は減価償却の対象とはならないので注意しましょう。

減価償却できる資産には、次のような条件を満たす必要があります。

使用可能期間1年以上かつ、取得額が10万円以上の有形固定資産または無形固定資産

具体的には、取得費用が10万円以上の建物や機械・設備・備品・ソフトウェア・特許権などが該当します。

ただし、不動産においては「建物」は対象ですが、「土地」は対象外となるのです。

土地は、年数が経過したからと言って建物のように劣化し価値が損なわれるものではありません。

そのため、減価償却費を計上する場合は不動産購入額のうち土地の部分と建物の部分を分けて、建物部分でのみ減価償却を計上しなければならないのです。

建物の構造ごとに償却率が異なる

減価償却費は次の式で求められます。

減価償却費(定額法)=建物価格×償却率

この償却率は、建物の法定耐用年数に基づいて算出されており、建物の構造によって異なるのです。

主な構造別の償却率と法定耐用年数は以下のようになります。

構造耐用年数償却率
木造22年0.046
鉄骨造り(厚さ3~4mm以下)27年0.082
鉄筋コンクリート造47年0.022

中古の物件を購入した場合は、残存耐用年数を算出し年数に応じた償却率を利用するので注意しましょう。

中古物件の耐用年数は耐用年数以内か超えているかで求め方が異なり、それぞれ以下の計算方法で求めます。

  • 耐用年数内:耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+(築年数×0.2)
  • 耐用年数超:耐用年数=耐用年数×0.2

仮に、木造で築年数が15年と25年の場合は、耐用年数は次のようになります。

  • 木造築15年=(22年-15年)+(15年×0.2)=10年
  • 木造築25年=22年×0.2=4.4年

ちなみに、築年数は1年未満の端数月は切り上げ、耐用年数の計算結果の端数は切り下げとなります。

そのため木造築24年6ヵ月の場合は、築年数25年として計算し、計算結果の4.4年は耐用年数4年となるのです。

耐用年数を算出したら、その年数に応じた償却率を求めます。

  • 木造築15年の場合、耐用年数10年・償却率0.100
  • 木造築25年の場合、耐用年数4年・償却率0.250

上記のようになります。

耐用年数ごとの償却率は国税庁のホームページで調べられるので、一度確認するとよいでしょう。

なお、減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があり、それぞれ計算方法が異なるので注意が必要です。

減価償却で節税するメリット

減価償却で節税するメリット

減価償却を利用して節税するメリットには、次の3つが挙げられます。

  1. 2年目以降は実際に支出がないのに経費にできる
  2. 損益通算できる
  3. 赤字分を翌年以降に繰越できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット➀:2年目以降は実際に支出がないのに経費にできる

減価償却の大きなメリットが、実際の支出がない経費と言う点です。

基本的に経費というと、修繕費や管理費など実際に支払ったお金を計上します。

その点減価償却は、1年目は実際の購入費用を支払っていますが、2年目以降支出は伴いません。

仮に、利益が300万円あり減価償却を100万円計上した場合、手元には300万円残っていますが帳簿上の利益は200万円となるのです。

帳簿上の利益を小さくすることで課せられる税金の額も小さくできるため、節税効果を期待できるでしょう。

メリット②:損益通算できる

損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得などの他の所得の黒字と相殺して申告できる制度のことです。

例えば、不動産所得で300万円の赤字があり給与所得が500万円の場合、相殺した200万円を所得として申告します。

これにより課税対象となる所得額を圧縮できるため、所得税・住民税の節税が見込めるのです。

損益通算は、不動産所得が赤字であることが前提となります。

この赤字を生み出すのに減価償却が役立つのです。

不動産投資の損益通算については、不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説で詳しく解説しています。

不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説

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メリット③:赤字分を翌年以降に繰越できる

損益通算でも相殺しきれない赤字は翌年以降最長3年に渡り繰越せ、これを「繰越控除」と言います。

例えば、1年目で不動産所得が1,300万円の赤字、毎年の給与所得が400万円の場合を見てみましょう。

なお、計算をイメージしやすくするため2年目以降の不動産所得については考慮しないものとします。

  • 1年目:400万円-1,300万円=-900万円(損益通算)
  • 2年目:400万円-900万円(繰越控除1年目)=-500万円
  • 3年目:400万円-500万円(繰越控除2年目)=-100万円
  • 4年目:400万円-100万円(繰越控除3年目)=300万円

上記の場合、3年目までは所得が赤字となるため、所得税・住民税が課せられません。

4年目も所得が300万円に抑えられるので、節税が見込めるでしょう。

ちなみに、繰越控除3年目でも相殺しきれない分は4年目に持ち越せないので注意が必要です。

減価償却における節税の注意点

減価償却における節税の注意点

節税効果が見込める減価償却ですが、注意しなければ反対に損してしまう可能性があるのです。

注意したいポイントとして、次の2つを紹介します。

  1. 償却した分売却時の税金が高くなる
  2. 計算が複雑で税務調査時に指摘を受けやすい

注意点①:償却した分売却時の税金が高くなる

減価償却を利用した場合の注意点が、売却時に税金が高額になる可能性があるという点です。

不動産を売却した際、売却益は譲渡所得と呼ばれ譲渡所得税が課せられます。

譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。

  • 課税譲渡所得=物件売却額-(取得費用+譲渡費用)-特別控除額
  • 譲渡所得税=課税譲渡所得×税率

課税対象となる売却益は、「売却額」から「取得費」と「譲渡費」を差し引いた額です。

取得費とは、物件を取得するために掛かった費用であり、物件の購入額や不動産会社への仲介手数料などが含まれます。

また、譲渡費は物件の譲渡に掛かった仲介手数料などの費用のことです。

このうち、減価償却が関わってくるのが「取得費」になります。

取得費では物件購入額を差し引けますが、この購入額は実際に購入した時のそのまま価格ではありません。

建物は築年数が経過することで価値が減少するため、売却時点の価値を求める必要があるのです。

売却時点の価値とは、購入価格から減少した価値分である経費計上済みの減価償却費を差し引いた価格となります。

仮に、5,000万円で購入した物件を8年後に5,000万円で売却したとしましょう。

この場合、一見すると利益が発生していないため譲渡所得税も課税されないように思われるものです。

しかし、減価償却費として3,000万円を計上していた場合、取得費は5,000万円-3,000万円=2,000万円となります。

そのため、売却額5,000万円から取得費として2,000万円しか差し引けず、減価償却分である3,000万円は利益となり譲渡所得税が課せられるのです。

ちなみに、購入時の費用が分からない場合は、概算取得費として「売却価格×5%」しか差し引けなくなります。

購入時の契約書など取得費の証明ができない場合も概算取得費での計上となるので、契約書などは大切に保管しておくことが大切です。

このように、減価償却費は不動産所有期間中に計上することで節税できますが、計上しすぎると売却時に高額な税金が課せられる可能性があるので注意しましょう。

注意点②:計算が複雑で税務調査時に指摘を受けやすい

減価償却費の計算は、構造ごとに異なるだけでなく土地と建物を分けて計算しなければならず複雑になりがちです。

また、税金が関わる項目であり税制の改定にも左右される可能性があります。

会計や税金などの知識が必要になり、確定申告で減価償却費の取り扱いに悩む方も少なくなりのです。

減価償却での計算ミスは税務調査で指摘を受けるなど、トラブルに発展する可能性もあります。

減価償却の計算に不安があるなら、税理士などの専門家への依頼をおすすめします。

保有時の税金の計算方法

保有時の税金の計算方法

ここでは、減価償却が関わる税金の具体的な計算方法について見ていきましょう。

まずは、不動産所有時の税金の計算方法です。

不動産所有時に得た家賃収入は、不動産所得として所得税・住民税の対象となります。

不動産所得の計算

不動産所得の計算は、次のとおりです。

不動産所得=総収入-必要経費

大まかには、「家賃収入などの収入合計から掛かった経費を差し引いた額が不動産所得」というイメージです。

収入には、家賃収入以外にも次のようなものも含まれます。

  • 家賃とは別に設定した駐車場収入
  • 更新料
  • 敷金や礼金のうち返還の必要がないもの
  • 管理費や共益費

また、差し引ける経費としては、次のような項目があります。

  • 管理会社への委託料
  • 修繕費
  • ローンの金利部分
  • 固定資産税
  • 各種保険料
  • 減価償却費

必要経費の計算で減価償却を計上する

減価償却も必要経費として計上し、不動産所得を算出します。

例えば、次の場合で見ていきましょう。

  • 年間収入:600万円
  • 年間経費(減価償却を除く):200万円
  • 不動産価格:3,000万円(鉄筋コンクリート築15年/土地1,000万円:建物2,000万円)

まずは、減価償却費を計算します。

  • 耐用年数=(47年-15年)+(15年×0.2)=35年
  • 償却率:0.029

減価償却費は建物のみで計算するので、以下の通りです。

減価償却費=2,000万円×0.029=58万円

この場合は、年間58万円を35年に渡って計上できます。

減価償却費を必要経費に含めて不動産所得を計算すると、次のようになります。

不動産所得=600万円-(200万円+58万円)=342万円

上記の例では、不動産所得は342万円となるのです。

納税額の計算

この不動産所得に、所得税・住民税の税率を乗じた額が納税額となります。

なお、本来はこの不動産所得に給与所得などの他の所得を合計した額で算出しますが、ここでは不動産所得のみで計算しています。

所得税は、所得額に応じて税率が異なる累進課税となり、所得額が高くなるほど税率も高くなるものです。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%63,600円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

不動産所得が342万円の場合の所得税は、次のとおりです。

所得税=342万円×20%-427,500円=256,500円

住民税は、所得に関わらず所得額に対して一律10%が課税されます。

住民税=342万円×10%=342,000円

所得税+住民税=256,500円+342,000円=598,500円

ちなみに、減価償却費を差し引かない場合では所得税・住民税は次のようになります。

  • 不動産所得=600万円-200万円=400万円
  • 所得税=400万円×20%-427,500円=372,500円
  • 住民税=400万円×10%=400,000円
  • 所得税+住民税=372,500円+400,000円=772,500円

上記のように17.4万円の納税額に差が出てくるのです。

売却時の税金の計算方法

売却時の税金の計算方法

次に、売却時の税金の計算について見ていきましょう。

先述したように不動産と売却した場合、売却益に対して譲渡所得税が課せられます。

課税譲渡所得の計算

課税対象となる譲渡所得は、次の計算で求めます。

課税譲渡所得=物件売却額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

取得費の計算で減価償却分を差し引く

この取得費では、不動産購入価格から減価償却分を差し引きます。

減価償却は土地には適用されないので、取得費は次のようになります。

取得費=(建物の購入額-建物の減価償却費)+土地の購入費

具体的に見てみましょう。

築年数20年の木造アパートを3,500万円(土地1,500万円:建物2,000万円)で購入し、5年後に3,000万円で売却したとします。

なお、分かりやすくするため建物購入以外の取得費は計算に考慮せず、譲渡費用300万円・特別控除額0円で計算します。

減価償却費は以下のようになります。

  • 耐用年数=(22年-20年)+(20年×0.2)=6年
  • 償却率=0.167
  • 減価償却費=(2,000万円×0.167)×5年間=16,700,000円

よって取得費・譲渡所得は以下の通りです。

  • 取得費=2,000万円-1,670万円+1,500万円=1,830万円
  • 譲渡所得=3,000万円-(1,830万円+300万円)=870万円

この場合、売却によって870万円の利益が発生しており、この額に税金が課せられます。

納税額の計算

譲渡所得税は、課税譲渡所得額に譲渡所得税の税率を乗じることで算出できます。

譲渡所得税の税率は、物件の保有期間によって異なり、次のとおりです。

所有期間所得税住民税税率合計
短期譲渡所得5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15.315%5%20.315%

上記の例では、所有期間が5年なので長期譲渡所得の税率で計算します。

譲渡所得税=870万円×20.315%=1,767,405円

よって約177万円もの税金が課せられるのです。

ちなみに、所有期間は売却した年の1月1日時点が基準日となるので注意しなければなりません。

仮に、2015年6月1日に購入して2020年7月1日に売却した場合を見てみましょう。

実際の所有期間は5年を超えていますが、2020年1月1日時点では5年を超えていません。

そのため、短期譲渡所得の税率が課せられてしまうのです。

短期譲渡所得は長期譲渡所得に比べて税率が高額なので、所有期間に注意して売却を検討する必要があります。

まとめ

不動産投資の減価償却についてお伝えしました。

支出を伴わない経費である、減価償却は上手に活用することで税金を抑えられるなどのメリットがあります。

しかし、計算が複雑になり売却時の税金が高くなるなどの注意点もあるので、慎重に判断することが重要です。

減価償却は判断が難しくなるので、不安がある方は一度専門家に相談することをおすすめします。

この記事を参考に、減価償却について理解したうえで、上手に活用して不動産投資を成功させましょう。

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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