不動産投資

不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説

不動産投資における「損益通算」ってどういう意味ですか?あとどういった仕組みなのか教えてください。

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 不動産投資における損益通算の仕組み
  • 損益通算の計算方法
  • 青色申告すれば赤字を繰り越すことも可能
  • 法人化した場合の損益通算は?

不動産投資で節税できる大きなポイントとなる「損益通算」
の仕組みを理解しなければ、思ったほど節税効果を得られないという可能性もあります。

また、不動産投資を個人でするのか法人化してするのかによっても、損益通算の計算方法が異なるので注意しなければなりません。

しかし、損益通算の仕組みや計算方法がよく分からないという方も多いでしょう。

この記事では、損益通算の仕組みや計算方法を分かりやすく解説していきます。

併せて、法人化した場合の損益通算についても解説するので参考にしてください。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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不動産投資における損益通算の仕組み

不動産投資における損益通算の仕組み

損益通算とは、赤字の所得を黒字の所得から差し引いて所得を計算することを言います。

例えば、A株式で100万円の損失があり、B株式で300万円の収益がある場合、相殺した200万円を所得として申告するのです。

不動産投資の場合、この損益通算が節税に大きな役割を果たします。

大まかに言うと「不動産所得での赤字で給与所得を圧縮することで所得税を抑える」というのが、不動産投資の節税です。

この給与所得を圧縮する方法が損益通算になります。

家賃収入=不動産所得と給与所得など本業の所得を合算できる

不動産投資では、家賃収入が所得となります。

家賃収入の所得は、「不動産所得」という所得区分に属し、他の所得と合算する総合課税の対象です。

合算する所得には、サラリーマンの給与所得や個人事業主の所得である事業所得などが該当します。

例えば、不動産所得が100万円あり、給与所得が400万円の場合は合算した500万円が所得合計額として課税対象となるのです。

ちなみに、上記のように黒字と黒字を合算する場合は、相殺しているわけではないので損益通算とはなりません。

反対に、不動産所得が赤字の場合、給与所得の黒字と相殺できます。

仮に不動産所得が200万円の赤字で給与所得が300万円の場合は、相殺した所得である100万円が課税対象となるのです。

所得税の税率は累進課税

所得税は累進課税制度で課税されるため、所得額が高くなるほど課税率も高くなるという特徴があります。

累進課税制度の課税率は、次のとおりです。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

例えば、所得が500万円の場合の所得税は、次のようになります。

所得税=5,000,000円×20%-427,500円=572,500円

不動産所得は、他の所得と合算した額が課税対象となります。

両方黒字の場合、合算額が大きくなるので所得税も高額になってしまうのです。

反対に、不動産所得が赤字の場合、給与所得などの本業の所得と相殺することで合計所得額を低くでき、所得税も抑えられます。

給与所得者は損益通算で税金の還付を受けられる可能性がある

給与所得者の場合、所得税の減額分を還付という形で受けられます。

会社から給与を得ている場合、源泉徴収として毎月の給与から天引きであらかじめ所得税が納税されています。

しかし、この所得税は給与の変化や控除などを反映していないため、実際の所得税と異なる場合があるのです。

そのため、会社ではその年の所得が確定する年末に、年末調整で正しい所得税額を計算し直します。

不動産所得の場合、天引きされている所得税額には反映されていません。

不動産所得が赤字の場合、損益通算で所得額を低く確定申告することで、所得税が計算し直され、納めすぎている分の還付を受けられるのです。

会社から給与を得ている以外でも、雑所得や事業所得であっても取引先から源泉徴収を受けている場合は、確定申告することで還付を受けられます。

ただし、源泉徴収のない個人事業主などは、確定申告することで納める所得税額を低くする形となり、還付はありません。

所得税の確定申告をすれば住民税も自動で計算される

所得税同様、住民税も所得額を元に納税額が決められます。

住民税の場合は、所得額に関係なくその年の所得に対して一律10%で課税され、翌年納税するものです。

住民税は、所得税を確定申告することで自動的に計算されます。

住民税の場合は、これから納める税金のため、損益通算で所得が低くなっても還付はありません。

しかし、翌年支払う住民税額を低くできるので、節税効果を見込めるのです。

損益通算の計算方法

損益通算の計算方法

ここでは、損益通算の計算方法について具体的に見ていきましょう。

損益通算の計算方法は、大まかに次の手順で計算します。

  1. 本業の所得を計算する
  2. 不動産所得を計算する
  3. 本業の所得と不動産所得を合算する

手順①:本業の所得を計算する

まず、本業の所得を確定させます。

本業の所得とは、次の4つの所得の合計額のことを言います。

  • 給与所得:会社から得る給与
  • 利子所得:預貯金や国債などの利子
  • 配当所得:株の配当や投資信託の分配金
  • 雑所得:年金や印税などのその他の所得

また、個人事業主の場合は、給与所得ではなく事業所得が本業の所得となります。

給与所得の場合は、年末に会社から発行される源泉徴収票で確認できるでしょう。

事業所得の場合は、自分で計算が必要になるので事前に準備しておくことが大切です。

手順②:不動産所得を計算する

本業の所得が確定したら、不動産所得を計算します。

不動産投資では、家賃収入が主な収入ですが、この収入=不動産所得というわけではありません。

不動産所得の計算方法は、次のとおりです。

不動産所得=不動産収入-必要経費

不動産収入には、家賃収入以外にも次のような収入も含まれます。

  • 更新料
  • 共益費
  • 礼金などの返還を要しない費用
  • 家賃とは別途徴収する駐車場代

これらの収入の合計額から、必要経費を差し引いた額が不動産所得となります。

ただし、不動産投資では掛かった経費をすべて必要経費として計上できるわけではないので注意が必要です。

経費として計上できるのは、次のような費用になります。

  • 修繕費
  • 固定資産税や都市計画税
  • 火災保険料や損害保険料
  • 共有部分の光熱水費
  • 管理会社への委託費用
  • 税理士や司法書士への報酬
  • 借入金の利息部分

損益通算する場合、借入金の利息には注意が必要です。

不動産を購入する場合、金融機関から借入するのが一般的でしょう。

この借入金の返済額のうち、利息部分は経費計上が可能です。

しかし、損益通算する場合は、利息のうち土地部分に対する利息は計上できません。

損益通算する時には、土地と建物・設備を分けて利息を計算して計上する必要があるので注意しましょう。

経費として認められるのかは、判断が難しい場合があります。

過剰に経費を申告した場合、税務署からチェックを受ける場合があるでしょう。

反対に、経費として認められるものを計上しない場合、税務署が教えてくれるわけではないので、必要以上に高い税金を納める場合があるのです。

経費について不安がある場合は、税理士に相談しながら計算することをおすすめします。

手順③:本業の所得と不動産所得を合算する

本業の所得と不動産所得が確定したら、両方の所得を合算して確定申告します。

この時、不動産所得を赤字にすることで本業の所得を相殺し課税対象額を低くできるのです。

損益通算できるのは「不動産所得が赤字」であることが前提です。

不動産所得が赤字ということは、投資としては失敗なのではと思う方もいらっしゃるでしょう。

もちろん、収益を上げられず赤字になるのは、不動産投資の本来の目的とは異なるため、節税ができても本末転倒ともいます。

しかし、不動産投資では、実際の経営は黒字で会計上赤字にすることで節税を狙える方法があるのです。

それが「減価償却費」を利用した赤字です。

減価償却費とは、経年による資産価値の減少分を経費として計上する会計上の処理のことを言います。

具体的には、不動産などの固定資産は購入した年に一括で費用計上するのではなく、償却期間に応じた額を毎年計上するという仕組みです。

例えば、1,000万円で物件を購入した場合、購入した年に1,000万円を計上するのではなく、10年に渡って100万円ずつ費用計上していくという形になります。

減価償却費は、実際の支出を伴わない経費です。

そのため、減価償却を活用することで、実際の所得は黒字でも会計上のみ赤字にすることが可能になります。

ただし、減価償却は土地には適用できません。

また、不動産毎に計算が必要なため、税理士に相談しながら計算するとよいでしょう。

青色申告すれば赤字を繰り越すことも可能

青色申告すれば赤字を繰り越すことも可能

確定申告の方法には、「青色申告」と「白色申告」があります。

  • 青色申告:複式簿記の帳簿が必要となる申告方法
  • 白色申告:青色申告以外の申告方法

青色申告とは、日々の取引を複式簿記へ帳簿したうえで確定申告することで、青色申告控除など税制上のメリットを受けられる申告制度です。

青色申告する場合は、開業届を提出したうえで税務署に事前に青色申告承認申請書の提出が必要になります。

不動産投資で利益が出たら確定申告する必要がある?計算方法や確定申告の具体的な流れを解説

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損益通算してもなお赤字が残る場合は3年間繰越控除できる

青色申告するメリットの一つに、赤字を繰越控除できるという点があります。

損益通算し所得が赤字になった場合、その年の所得税や住民税は課税されません。

しかし、通常の確定申告では、赤字はその年のみで完結し、翌年に持ち越せないのです。

それに対し、青色申告の場合、相殺し切れなかった赤字を翌年以降最大3年間持ち越せ、このことを繰越控除と言います。

例えば、不動産所得で600万円の赤字があり給与所得が200万円の場合は、次のとおりです。

1年目:200万円-600万円=-400万円で確定申告(損益通算)
2年目:200万円-400万円(繰越控除)=-200万円
3年目:200万円-200万円(繰越控除)=0円

このように、相殺しきれない赤字部分を翌年以降に持ち越すことで、所得を抑えられ節税が見込めるのです。

ちなみに、3年目でも相殺できない場合は翌年には持ち越せないので注意しましょう。

繰越控除を受けるための要件

繰越控除を適用するには青色申告者であることが前提です。

また、次のような要件を満たす必要があります。

  • 赤字が発生した年度に青色申告していること
  • 赤字発生以降、連続して青色申告していること

法人化した場合の損益通算は?

法人化した場合の損益通算は?

不動産投資の場合、法人化して投資するケースもあります。

法人で不動産投資する場合、個人とは損益通算が異なるので注意が必要です。

法人はあらゆる損益が合算される

法人の場合、所得に区分がないためあらゆる所得と損益通算が可能です。

個人で損益通算する場合、不動産所得と給与所得は損益通算可能ですが、不動産売却による所得とは損益通算ができません。

不動産売却の利益は、譲渡所得に区分され損益通算の対象とはならないのです。

また、先述したように土地にかかる利息は算入できないなどの制限も多くあります。

法人として投資した場合、事業としての所得や家賃収入などの所得などを損益通算できるというメリットがあるのです。

個人の所得とは合算できない

法人の場合、法人として発生した所得はどの所得であっても損益通算が可能です。

ただし、法人の所得と個人の所得を合算することはできないので注意しましょう。

法人の青色申告者は10年間の繰越控除が可能

法人化するメリットには、繰越控除の期間が長いという点があります。

個人の場合、青色申告者の繰越控除は最大3年間です。

それに対し、法人の青色申告者は9年まで繰越控除できます。

そのため、ある年で大赤字を出したとしても、9年間控除することで税制上メリットを受けられ黒字化することも可能となるのです。

個人で不動産投資する場合、法人化するべきか悩む方も多いでしょう。

法人化した場合、繰越控除の期間が長いなどのメリットがあります。

ただし、法人化した場合、個人の所得税とは異なり法人税が課せられ、税率も所得税とは異なるものです。

また、法人化するにはある程度の費用も掛かります。

法人税と所得税の税率の比較やメリット・デメリットを検討したうえで、法人化を慎重に判断することが大切です。

まとめ

不動産投資の損益通算の仕組みや計算方法、法人の損益通算についてお伝えしました。

不動産所得の赤字を本業での黒字の所得と損益通算することで、所得額を抑え所得税・住民税の節税を見込めます。

ただし、損益通算して節税するには不動産所得が赤字であることが前提のため、節税目的のために不動産投資を失敗しないよう注意する必要があります。

また、法人化すると損益通算の仕組みが個人とは異なってくるので、法人化を慎重に判断することが大切です。

この記事を参考に、損益通算の仕組みを理解し、不動産投資を成功したうえで節税できるようにしましょう。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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