不動産投資

不動産投資で土地建物比率を調べる方法とは?分からない場合の比率を決める方法など解説

不動産投資で土地建物比率ってどうやって調べればいいのでしょうか?

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 土地建物比率で納税額が変わる
  • 土地建物比率を調べる方法
  • 売買契約書で土地建物比率が分からない場合の決め方
  • 売主との交渉で土地建物比率を決めることもできる

「保有する不動産の土地建物比率を調べたい」
「土地建物比率の割合の決め方を知りたい」

このようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

不動産投資においては、確定申告時に建物代金を減価償却費として経費に計上する必要があります。

土地と建物の価格割合によっては、経費に計上できる金額にも大きな差が生じるケースが多いです。

そのため、同じ金額の不動産であっても税務面で有利・不利が発生する可能性があります。

節税対策を行うためには、土地建物比率を決める仕組みを理解しておくことが重要といえるでしょう。

そこで、本記事では、土地建物比率について詳しく解説していきます。

是非とも最後まで読んで頂き、土地建物比率の仕組みや土地建物比率の調べ方を理解し、ご自身の不動産投資にお役立て下さい。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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土地建物比率で納税額が変わる

土地建物比率で納税額が変わる

土地建物比率によっては納税額が変わってきます。

例えば、土地と建物の価格の合計が1,000万円という不動産が2つあったとしましょう。

この時、「土地価格100万円+建物価格900万円」の不動産と「土地価格900万円+建物価格100万円」の不動産では、どちらを購入した方が税務面では有利に働くでしょうか。

結論から申し上げると、後者の「土地価格100万円+建物価格900万円」の不動産の方が税務面ではメリットが大きくなります。

つまり、例え同じ価格の不動産であっても、建物価格の割合が大きい方が税務メリットは大きくなるということなのです。

一体、なぜ建物価格の大きい不動産だと節税メリットが大きくなるのでしょうか。

その秘密は「減価償却」にあります。

ここでは、建物価格が大きい不動産の節税メリットが大きくなる理由と合わせて減価償却の仕組みについて以下の通りご紹介します。

  1. そもそも減価償却とは?
  2. 減価償却されるのは建物部分のみ
  3. 不動産保有時の減価償却費
  4. 不動産売却時の減価償却費

➀:そもそも減価償却とは?

そもそも減価償却とは、どういう仕組みなのでしょうか。

減価償却とは不動産や設備などの資産の購入にかかった費用を一定の期間にわたって経費として計上していく会計処理のことです。

建物や車といった資産は、取得してから長期間にわたって使用できますが、年数が経過するごとにその価値は徐々に減少していきます。

そのため、購入代金を一度に経費として処理するのではなく、その設備の耐用年数に合わせて毎年少しずつ経費として計上するという会計ルールが定められているのです。

また、減価償却は企業の経営活動の実態をより正確に表すのを目的としています。

銀行などの金融機関が融資審査を行う際にも減価償却が適正に実施されているかどうかもポイントになりますので注意しておくと良いでしょう。

不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?

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➁:減価償却されるのは建物部分のみ

不動産の場合、減価償却の対象となるのは建物部分のみと決まっています。

土地は時間が経過しても価値が減少していくものではないため、減価償却の対象にはなりません。

このような会計ルールから、建物価格の割合が大きい方が償却可能な資産が多くなるため、節税メリットが大きくなるのです。

また、建物部分については、建物をさらに躯体と設備で分けるケースもあります。

躯体と設備に分けるとそれぞれの耐用年数に違いが生じるため、減価償却費が大きくなるため、税務インパクトが大きくなるケースが多いです。

➂:不動産保有時の減価償却費

不動産保有時には、不動産所得の計算において減価償却を経費として計上できます。

減価償却費は、資産を取得する際にかかった費用を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として計上していく仕組みになっています。

実際にその年に支払った経費ではないものの、経費として計上することで利益を少なくできるので納税額を抑えられる効果が見込めるのです。

納税は正しく行わなくてはなりませんが、せっかく儲かったお金を税金ばかりたくさん支払うことになるのは面白くないでしょう。

賢く節税を行うためにも、減価償却の仕組みをしっかりと押さえておくのが重要です。

➃:不動産売却時の減価償却費

不動産売却時には、譲渡所得の計算において減価償却費を取得費から控除する必要があります。

不動産保有時には不動産所得の計算において減価償却を経費計上でき、節税効果が期待できます。一方、売却時には減価償却が大きいと売却時に発生する譲渡所得税が高くなってしまうケースが考えられるでしょう。

減価償却した建物を売却する場合、譲渡所得税を考慮したうえで進める必要があります。

このように土地建物比率は、減価償却費を考慮する際に必要となるものであり、不動産売買において非常に重要なポイントといえるのです。

土地建物比率を調べる方法

土地建物比率を調べる方法

減価償却の仕組みについてお伝えしました。

土地建物比率は、減価償却を考慮するうえで必要なものであり、不動産売買において非常に重要なポイントであるとご理解できたことでしょう。

では、実際に土地建物比率を調べるにはどうすればいいのでしょうか。

土地建物比率は、売買契約書を確認すると求めることができます。

土地と建物が分かれているケース

売買契約書において、土地の価格と建物の価格が分かれて記載されている場合には、そのまま読めば問題ありません。

例えば、土地400万円、建物600万円の合計1,000万円と記載されていたとしましょう。

このケースであれば、建物価格として記載の600万円が建物価格となります。

土地と建物が分かれていないケース

土地と建物が分かれている場合にはそのまま読めば問題ありませんが、土地と建物が分かれていないケースも少なくありません。

この場合には、消費税が書かれているかどうかで求め方が変わってきます。

それぞれ見ていきましょう。

  1. 消費税が書かれているケース
  2. 消費税が書かれていないケース

➀:消費税が書かれているケース

消費税が書かれている場合には、その消費税額から計算可能です。

消費税は、土地にはかかりません。建物のみに消費税がかかってきます。

そのため、売買契約書に消費税額が書かれていた場合には、建物部分の消費税を表していることになります。

そのため、消費税額から建物の税抜価格が割り出せるのです。

例えば、売買価格2,000万円(うち消費税100万円)と記載されていたとしましょう。

この場合、「100万円÷10%=1,000万円」となり、建物の税抜価格は1,000万円となります。

但し、売買契約時によって消費税率が異なります。

2019年以降は建物にかかる消費税率は10%ですが、2014年~2018年までは8%、1997年~2013年までは5%、1989年~1996年までは3%となっています。

売買契約時の税率をしっかりと確認し、間違えないよう注意が必要です。

➁:消費税が書かれていないケース

消費税が書かれている場合には、消費税額から建物価格を割りだすことが可能です。

一方、消費税額が書かれていない場合には、売買契約書だけでは土地建物比率を計算できません。

そのため、消費税が書かれていない場合には、別の方法で土地建物比率を計算する必要があります。

消費税が書かれていないケースでの土地建物比率の決め方については、次章で詳しく解説します。

売買契約書で土地建物比率が分からない場合の決め方

売買契約書で土地建物比率が分からない場合の決め方

売買契約書で土地建物比率が分からない場合、どのように決めれば良いでしょうか。

ここでは、土地建物比率の決め方として以下の方法について詳しく解説しますので、それぞれ見ていきましょう。

  1. 固定資産税評価額を参考にする
  2. 鑑定評価額を参考にする
  3. 土地や建物の原価を参考にする

その①:固定資産税評価額を参考にする

売買契約書で土地建物比率が分からない場合、固定資産税評価額を参考にするケースがもっとも一般的な方法といえるでしょう。

固定資産税評価額は、不動産鑑定士の査定を基にして、地方自治体や税務当局が定められています。

そのため、極めて客観性の高い指標といえるでしょう。

公的機関が定めている評価額であり、後々に指摘を受けるケースも低いと考えられます。

例えば、売買価格が2,000万円の物件で考えてみましょう。

その物件の固定資産税評価額を調査し、その割合が5:5だった場合、購入価格も5:5の比率で按分すれば、建物価格1,000万円と計算できます。

固定資産税評価は、土地部分は市場の情税を加味したケースが多く、建物部分は建物の構造や種類による原価性を考慮して算出されているケースが多いです。

その②:鑑定評価額を参考にする

不動産鑑定士による鑑定評価額を参考にするケースも考えられるでしょう。

不動産鑑定士とは、国家試験に合格し、不動産の鑑定評価に関する法律によって資格を付与されている不動産の専門家です。

不動産鑑定士は、その物件のある地域の環境やさまざまな条件を考慮したうえで、適正な価格を判断しています。

国家資格保有者の判断によるものであり、後々に当局から指摘を受けるケースは少ないと考えられるでしょう。

但し、不動産鑑定士に依頼する場合には、費用がかかります。

また、売主と買主のどちらが依頼した鑑定士なのかによっても鑑定額に差が発生するケースも考えられるでしょう。

原価性や市場性、収益性、開発性など、どの要素を重視するかは不動産鑑定士の採用する手法によって異なります。

不動産鑑定士に依頼する場合には上記の点にも注意したうえで検討すると良いでしょう。

その③:土地や建物の原価を参考にする

土地や建物の減価を参考にする方法も土地建物比率が分からない場合に用いられるケースといえます。

この方法は、現在の売主が当初土地を購入した際の「売買契約書」や建物を新築した際の「工事請負契約書」を基にして土地建物比率を算出する方法です。

この場合、専門的な知識が必要となるため、ハードルの高い手法といえるでしょう。

売主との交渉で土地建物比率を決めることもできる

売主との交渉で土地建物比率を決めることもできる

売買契約書に消費税額が記載されていない場合の土地建物比率の決め方についてお伝えしました。

土地建物比率の決め方としては、

  • 固定資産税評価額を参考にする
  • 鑑定評価額を参考にする
  • 土地や建物の原価を参考にする

といった方法があり、それぞれの特徴についても理解できたのではないでしょうか。

しかし、これらに加えて、売主との交渉でも土地建物比率を決めるのも可能とされています。

例えば、売主に対して「土地と建物を3:7の割合で売買契約書に記載したい」と交渉し、了解を得られれば、その比率に応じた建物価格で按分しても良いというものです。

但し、この買主と売主によってメリット・デメリットも生じる他、注意しておくポイントがあります。

ここでは、以下の点について解説しますので、それぞれ見ていきましょう。

  1. 交渉で決める際には正当な根拠が必要
  2. 建物比率を高くする買主のメリット
  3. 建物比率を高くする売主のデメリット

その①:交渉で決める際には正当な根拠が必要

土地建物比率を交渉で決める際には、正当な根拠が必要となります。

交渉によって決められたその土地建物比率が客観的に見て合理性に欠けているケースや合理的な説明が難しい場合には認められないケースが考えられるでしょう。

例えば、売主が取得した時の建物価格が1,000万円であったにも関わらず、売買時の建物価格2,000万円だった場合はどうでしょうか。

一般的に、建物の価値は経年劣化によって減少すると考えられています。

この考えがあるからこそ、減価償却という概念が成り立っているといえるでしょう。

そう考えると、この建物価格は大きくかけ離れているため、正当な根拠がないと判断されかねません。

このように正当な根拠がない場合には、売買取引としては有効であっても、税務上では適正ではないと判断され、当局から認められない可能性が高いでしょう。

その②:建物比率を高くする買主のメリット

建物比率を高くする買主側のメリットとして、減価償却を大きくできるという点が考えられるでしょう。

建物比率が高い方が減価償却を大きく経費として計上できるため、所得額を抑えることが可能となります。

収益性の向上を考えるためには、購入物件の建物価格は重要なポイントといえるでしょう。

その③:建物比率を高くする売主のデメリット

一方で、建物比率を高くした場合、売主としては譲渡所得が多額になり、課税額が大きくなるデメリットが考えられます。

また、売主が不動産会社などの消費税課税事業者であった場合には、建物割合を高くするのは消極的であるケースが多いでしょう。

建物割合が大きくなると、多額の売却益が発生し、その分納めなくてはならない消費税額が増えてしまうため、売主側にとってデメリットとなってしまうのです。

しかし、売主が消費税免税事業者(課税売上1,000万円以下の事業者)であった場合には、こうした制約がないため、建物割合を高くする交渉にも応じてもらいやすいでしょう。

まとめ

本記事では、土地建物比率について詳しくお伝えしました。

収益性の高い不動産投資を行うには、建物比率を大きくして減価償却を多く計上することで節税メリットを活かすのがポイントといえます。

しかしながら、あまりにも実態とかけ離れた土地建物比率を設定してしまうと、当局から認められず、追徴が発生する可能性も考えられるものです。

専門性の高い知識が必要になるケースも多いため、土地建物比率をどうするかは不動産会社や税理士などの専門家にしっかりと相談したうえで決めると良いでしょう。

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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