不動産投資

不動産投資は個人と法人どっちがいい?個人事業主で始めるメリット・デメリットや開業の流れを解説

不動産投資をするなら、個人と法人どっちがいいのでしょうか?個人事業主で始めるメリットやデメリットを教えてください。

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 不動産投資をやるなら個人と法人どっちがいい?
  • 個人事業主で不動産投資するメリット
  • 個人事業主で不動産投資するデメリット
  • 個人事業主として開業する流れ
  • 規模が大きくなったら法人化しよう

不動産投資する方法には、個人事業主としてするか法人化してするかという選択肢があります。

どちらですべきか悩んでいる方も多いでしょう。

基本的には、個人事業主で不動産投資をスタートし規模に応じて法人化を検討する流れをおすすめします。

とはいえ、個人と法人で投資するのでは、どのような違いがあるのかを理解したうえで検討する必要があるものです。

この記事では、個人・法人の違いから、個人でするメリット・デメリットや開業の流れについて分かりやすく解説します。

不動産投資をやるなら個人と法人どっちがいい?

不動産投資をやるなら個人と法人どっちがいい?

不動産投資は、賃貸物件を運営し毎月安定した収入を得られるため、老後の資金対策や税金対策などでも有効な手段と人気があります。

一般的には、サラリーマンの副業としてスタートする方が多いでしょう。

しかし、不動産投資が順調に進むと収入が増え税金が高額になってしまう可能性があるものです。

その際に検討できる選択肢として、「個人事業主」か「法人化」があります。

個人事業主と法人の違い

個人事業主とは、字のとおり「個人で事業を営んでいる人」のことです。

サラリーマンが会社と雇用契約を結んでいるのに対し、個人事業主はどこかの会社や団体に属しているわけではありません。

自分で事業を営んでいる人が、税務署に開業届を提出することで誰でも個人事業主になれるのです。

ちなみに、個人事業主と同じような言葉にフリーランスがあります。

フリーランスとは、会社などに属さず自分で仕事を請け負う「働き方」のことです。

フリーランスで働いている人が開業届を出すと個人事業主になり、個人事業主でフリーランスというケースもあります。

サラリーマンが個人事業主になると独立しなければいけないというイメージを持っている方もいるでしょう。

しかし、必ずしも独立する必要はなく、本業としてサラリーマンをしながら個人事業主として不動産投資することも可能です。

一方、法人とは法律によって人と同じ権利義務を認められた組織のことを言います。

株式会社や合同会社など形態はさまざまあり、それら法人を設立して事業を営むことを法人化というのです。

法人登記することで不動産投資の場合は、設立した会社が不動産の購入や運営・管理をして、投資家は会社から役員報酬を受けるという形になります。

会社設立と言っても、不動産投資のためだけの会社なので個人事業主に近い法人であり「プライベートカンパニー」とも呼ばれているのです。

個人事業主と法人では、「税金」や「社会からの信用」・「開業手続き」に大きな違いがあります。

個人事業主法人
開業手続き開業届の提出法人登記や許可申請など法人により異なる
資本金不要必要
開業費用不要30万円程
税金所得税・住民税
個人事業税
消費税
法人税
法人住民税
消費税
法人事業税

事業規模にもよるが最初は個人がおすすめ

個人事業主でするか法人でするのかは、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで慎重に検討する必要があるものです。

不動産投資の場合、個人事業主からスタートして規模が大きくなった時点で法人化を検討する流れをおすすめします。

なぜ、個人事業主として不動産投資したほうがいいのかについては、以下でメリット・デメリットを解説するので参考にしてください。

個人事業主で不動産投資するメリット

個人事業主で不動産投資するメリット

個人事業主として不動産投資するメリットには、次の3つが挙げられます。

  1. 低所得であれば法人よりも税率が低い
  2. 赤字分を給与所得などと損益通算できる
  3. 法人より確定申告の手間が少ない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット➀:低所得であれば法人より税率が低い

個人事業主の場合、一定額以下の所得であれば法人化した場合よりも税金を抑えられるというメリットがあります。

個人事業主として不動産投資する場合、利益に対して所得税や住民税が課せられます。

所得税は所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度となり、以下の税率が課せられるのです。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超330万円以下20%427,500円
695万円超900万円以下23%636,000円
900万円超1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

住民税は、所得額に関わらず所得に対して一律10%課税されるため、所得税・住民税で最大55%の課税となります。

一方、法人化した場合利益に対して法人税が課せられます。

法人税の課税率は所得に大きく左右されないという特徴があり、税率は以下の通りです。

区分税率
資本金1億円以下の普通法人年800万円以下の部分15%
年800万円超の部分23.20%
上記以外の普通法人23.20%

上記に加え、法人住民税や法人事業税などが課せられます。

これらの法人に課せられる税率の合計を「法人実効税率」と言い、所得や地域などによって異なりますが、おおよそ30%~35%程になるのです。

そのため、課税対象となる所得額が900万円を超えると、次のようになります。

  • 個人事業主の課税率:所得税33%+住民税10%=43%
  • 法人の課税率:法人実効税率30%~35%

上記のように、個人事業主での課税率が高くなってしまうのです。

反対に、900万円以下であれば個人事業主の課税率が低くなるのでメリットとなります。

ただし、個人事業主の課税対象所得は、不動産所得だけでなく本業の給与所得なども含まれた所得額であるという点には、注意が必要です。

メリット➁:赤字分を給与所得などと損益通算できる

不動産投資のメリットには、利益を給与所得などと損益通算することによる節税効果があります。

損益通算とは、不動産所得の赤字分を給与所得などの他の区分の黒字所得と相殺して申告できる制度です。

例えば、不動産所得で200万円の赤字があり給与所得が500万円の場合、相殺した300万円を確定申告できます。

これにより、課税対象となる所得額が低くなることで所得税・住民税を低くできるのです。

法人化した場合、不動産投資の損失は法人に計上され、個人の所得とは別のものとなるため合算できません。

個人の給与所得が高い場合の節税効果を見込めなくなるのです。

さらに、法人から役員報酬を得ている場合は、その報酬が所得に含まれるため所得が高くなり、より課せられる税率も高くなる点には注意しなければなりません。

メリット③:法人より確定申告の手間が少ない

個人事業主は、事業収支を計算し帳簿付けして確定申告の必要があります。

それまで確定申告をしていない人では、確定申告が難しいというイメージもあるでしょう。

しかし、会計ソフトなどを利用すれば税理士に依頼しなくでも自分一人でも確定申告可能です。

対して、法人の場合は決算書の作成など必要な書類も多岐に渡り、手続きも煩雑なため基本的には税理士を雇って申告するのが一般的です。

個人事業主では、法人に比べ確定申告の手間が少なく、自分でできれば税理士報酬などの費用も抑えられるというメリットがあります。

個人事業主で不動産投資するデメリット

個人事業主で不動産投資するデメリット

個人事業主として不動産投資するデメリットには、次のようなことがあります。

  1. 所得が高くなるほど税率が高くなる
  2. 資産規模が大きくなると相続税の負担が大きくなる
  3. 法人より融資に制限がある

それぞれ見ていきましょう。

デメリット➀:所得が高くなるほど税率が高くなる

先述した通り、個人事業主の場合所得額が一定以下であれば、法人よりも税率が低くメリットがあります。

反対に、所得額が高くなる場合は法人よりも高い税金の負担が必要になるのです。

例えば、給与所得500万円、不動産所得500万円の場合をみてきましょう。

個人事業主で不動産投資した場合、税金は以下の通りです。

  • 課税対象額:500万円+500万円=1,000万円
  • 所得税=1,000万円×33%-1,536,000円=1,764,000円
  • 住民税=1,000万円×10%=1,000,000円
  • 所得税+住民税=1,764,000円+1,000,000円=2,764,000円

法人(実効税率33%と仮定)

  • 法人税合計=500万円×33%=1,650,000円
  • 個人所得税=500万円×20%-427,500円=572,500円
  • 個人住民税=500万円×10%=500,000円
  • 納税額=1,650,000円+572,500円+500,000円=2,722,500円

上記の場合、法人として不動産投資したほうが個人で支払う税金の総額が低くなるのです。

個人で不動産投資する場合は一定額以上で法人よりも税金が高くなるので、自分はどの収入から法人化したほうがいいのかを一度計算しておくとよいでしょう。

デメリット➁:資産規模が大きくなると相続税の負担が重くなる

個人で不動産投資する場合、所有する不動産は個人の資産となります。

その状態で相続が必要になると、不動産が相続税の対象となる資産に含まれるため相続税も高額になる可能性があるのです。

法人化して不動産投資する場合、所有する不動産は会社の資産となります。

万が一相続となっても、会社の資産であるため不動産は相続税の対象とはならないのです。

法人化した場合の相続では、会社の代表が変わるだけで会社の資産を個人に相続させるわけではありません。

個人の資産を会社に移転することで、相続税対象資産が減少し、相続人の相続税の負担も減らせられるでしょう。

また、個人の場合不動産投資の収益を家族に分配できません。

法人であれば、家族に給与として資産を分配できるので、相続時の相続資産を減少される効果も期待できるのです。

資産規模が大きくなる場合、個人として不動産投資していると相続税対策が取りにくくなる点には注意しましょう。

ただし、法人の場合は相続時に持ち株があれば、株式が相続税の対象となるので、生前に株式の相続対策をしておく必要はあります。

不動産投資の相続税については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。

>> 不動産投資で法人化することによる相続に関する3つのメリットを解説!

不動産投資で法人化することによる相続に関する3つのメリットを解説!

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デメリット③:法人より融資に制限がある

個人と法人の大きな違いに「社会的信用」があります。

個人事業主として不動産投資するよりも、法人として会社を設立したほうが社会的に信用は高くなるのです。

そのことは、融資にもかかわってきます。

基本的に、個人で融資を受ける場合法人よりも制限が厳しくなるものです。

個人で融資を受ける場合、年収の〇倍までなどの「融資上限」と、済時〇歳までといった「年齢制限」が加わることが一般的でしょう。

また、金融機関でも個人よりも法人への融資を積極的に行う傾向があります。

そのため、年収や職業など属性が厳しくても法人であれば、融資を受けられる可能性が高くなるケースもあるのです。

法人の場合、融資が受けやすく制限がない場合が多いので、融資の幅が広がります。

特に、2棟目3棟目と事業規模を大きくしていきたい場合、融資に制限のない法人のほうがメリットは大きくなるでしょう。

個人事業主として開業する流れ

個人事業主として開業する流れ

ここでは、個人事業主として開業する流れを紹介します。

開業というと難しいイメージの方もいるでしょう。

しかし、個人事業主であれば開業も簡単に手続きできるものです。

開業届を出す

個人事業主として開業する場合、管轄の税務署に「開業届」を提出するだけで開業でき、手数料も不要です。

マイナンバーカードや免許所などの必要書類が必要になる場合もあるので、持参しておけばスムーズに申請できます。

また、届出の際には、税務署への提出用と控用の2部作成が必要です。

控えは融資を受ける際には重要な書類となるので大切に保管しておきましょう。

個人事業主で開業する場合、開業してから1ヶ月以内に申請することが必要です。

開業届を提出しなかったからと言って罰則があるわけではありません。

しかし、届出が遅れれば届出までの期間の経費が認められない可能性があるものです。

さらに、税制上の優遇などは受けられないので、早めに開業届を申請するようにしましょう。

青色申告承認申請書を提出する

開業届と同時に、青色申告承認申請書も提出しておくことをおすすめします。

青色申告承認申請書とは、確定申告で青色申告するために必要な届出です。

個人事業主の場合、青色申告することで次のようなメリットがあります。

  • 青色申告特別控除を受けられる
  • 家族への給与を経費にできる
  • 赤字を最長3年繰り越せる

青色申告では、複式簿記で記帳し一定の書類を揃えて電子申告(e-Tax)することで、65万円の特別控除を受けられます。

ちなみに、電子申告しない場合は55万円、それ以外でも10万円の控除を受けられます。

また、家族への給与を経費計上でき赤字を翌年以降に繰り越せるなどの、税制上の優遇も受けられるというメリットがあるのです。

ただし、複式簿記による記帳が必要になるため作成に少し手間がかかるものです。

とはいえ、会計ソフトを利用すれば簿記の知識がなくても作成できるので難しいものではありません。

青色申告するには、事前に青色申告承申請書の提出が必要なので、開業届と一緒に提出しておけば、後日提出する手間もかからず提出忘れを防げるでしょう。

規模が大きくなったら法人化しよう

規模が大きくなったら法人化しよう

不動産投資する場合、先述したように一定額以上の所得規模になれば法人化のほうにメリットがあります。

ただし、法人を設立するには費用がかかり、法人を維持するためにも多くの費用が必要になってくるものです。

自分の収入と不動産投資の収益、法人設立・運営に掛かる費用を含めて、どの規模で法人化すればメリットを得られるのかを算出しておくことが大切です。

まずは、個人事業主として不動産投資をスタートし規模が大きくなった時に法人化を検討するとよいでしょう。

不動産投資の法人化については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。

>> 不動産投資は個人と法人どっちがいい?法人で始めるメリット・デメリットや法人設立の流れを解説

不動産投資は個人と法人どっちがいい?法人で始めるメリット・デメリットや法人設立の流れを解説

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まとめ

不動産投資は、個人事業主として投資するか、法人化して投資するかという選択があります。

個人事業主として投資することで、法人よりも税率が低く所得も損益通算できるため、税金を低く抑えられるメリットがあるものです。

ただし、一定規模以上になると法人税率のほうが低くなるため、法人化を検討する必要があります。

この記事を参考に、個人事業主で不動産投資するメリット・デメリットを理解し、まずは個人事業主から不動産投資をスタートするとよいでしょう。

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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