といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いとは?
- 契約不適合になりどのようなことができるようになったのか?
- 契約不適合責任に関する注意点
- 契約不適合責任に代わり不動産売買はどうなる?
2020年4月に民法が改正され、民法の257項目に対して変更がありました。
その中、不動産売買における変更点で最も注目される点が、瑕疵担保責任が契約不適合責任という文言に変更になったことです。
では、瑕疵担保責任が契約不適合に変更になりどのような点が変わったのでしょうか?
この記事では瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いや契約不適合責任に変わり新たにできるようになったことなどについて解説します。
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契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いとは?
まずは、民法改正により瑕疵担保責任がなぜ契約不適合責任へと変更になったのかといった点が気になるところです。
また、そもそも瑕疵担保責任とはどのようなものかといったところからわからない人も多いのではないでしょうか?
今回の民法改正で、契約不適合責任へ変わった理由や、瑕疵担保責任の意味、契約不適合責任と瑕疵担保責任の違う点などについて解説します。
①:なぜ瑕疵担保責任が契約不適合責任へ変わる?
瑕疵担保責任といわれて、すぐに内容が思い浮かぶ人は、不動産業務の経験者や不動産の取引をたびたび行っている人に限られるのではないでしょうか?
非常に難しい漢字で、言葉すら読めないものが民法の用語となっていると民法自体がわかりにくいものと一般の人は感じてしまうかもしれません。
そこで、今回の民法改正によって、瑕疵担保責任のようにわかりにくい文言は、わかりやすい文言に変えることが変わった理由のひとつです。
もう一つの理由が、外国人投資家にもわかりやすく、国際的な基準に合わせるという目的です。
瑕疵担保責任を、外国語に訳してもうまく適合するような言葉がありません。
外国人と取引する機会も増えている昨今、国際的な理解度を高めるといった点も文言が変更になった大きな理由のひとつといえるでしょう。
②:瑕疵担保責任とは?
非常にわかりにくい言葉である瑕疵担保責任とは、民法上そもそもどのような内容なのでしょうか?
瑕疵とは、売買契約において、契約に支障がありそうな傷や不具合のことを指します。
瑕疵は、すでに売主が把握して、買主にきちんと報告し、対処できているものや瑕疵を理解した上で契約しているものは問題がありません。
問題なのは、買主が気づいていなかった瑕疵が売買契約後発見された場合です。
このようなものを隠れた瑕疵といいます。
このような瑕疵を発見した買主は、発見後1年間は損害賠償請求や契約解除ができると民法上定められているのです。
瑕疵担保責任については、民法改正により瑕疵担保責任免責が変わる?契約不適合責任とは?で詳しく解説していますのでそちらもご参照ください。
③:契約不適合責任とは?
民法が改正され瑕疵担保責任が契約不適合責任へと文言が変更になりました。
そもそも契約不適合責任とはどのようなものを指すのでしょうか?
契約不適合責任とは、契約の内容に合わなくなっている売買における売主の責任をあらわしたものです。
先ほどの隠れた瑕疵のように買主が気づかなかった傷や不具合のために契約が実行できない場合に、売主に一定の責任を求めることになります。
ここまで見ると瑕疵担保責任と契約不適合責任は、ほとんど同じようなものと捉えられるかもしれません。
しかし、契約不適合責任になりすこし内容も変わっています。
違いについては、次の項目で解説しましょう。
④:契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは何?
瑕疵担保責任において、隠れた瑕疵を発見した場合、発見後1年間のうちに買主は売主に対して損害賠償請求か契約解除ができると述べました。
しかし、契約不適合責任に変わり、買主は新たな権利を持てるようになったのです。
契約不適合責任となり買主が売主に対して有する権利は、
- 追完請求
- 代金減額請求
- 催告解除
- 無催告解除
- 損害賠償請求
となりました。
損害賠償請求は、瑕疵担保責任時と同じ権利ですが、瑕疵担保責任時の契約解除は、催告解除と無催告解除となっています。
また、新たに追完請求と代金減額請求ができるようになった点が大きな違いといえるでしょう。
契約不適合責任になりどのようなことができるようになったのか?
前述しましたが、瑕疵担保責任が契約不適合責任へと変わり、ただ文言が変わっただけではなく、買主の請求できる権利が変わりました。
契約不適合責任となり5つの権利を買主は有することになりますが、どのような権利を持つようになったのでしょうか?
ここからは、契約不適合責任に対する買主の権利について解説します。
①:追完請求
契約不適合責任になり新たに請求できるようになった権利です。
最も大きく影響する権利ともいわれています。
完全な状態で引き渡すことを請求できる権利です。
この請求は、いったん引き渡しが終わったとしても追完請求することができます。
追完請求は修補請求といわれることもあり、不動産取引においては、完全な状態になるように修理してくださいと請求する権利とも置き換えられるでしょう。
追完請求ができるのはあくまでも、引き渡されるまで買主や売主が知らなかった不具合についてです。
不具合や、傷などあらかじめ契約書などに記載してあり、それを納得した上で契約している場合は追完請求の対象ではありません。
②:代金減額請求
追完請求を行っても完全な状態で引き渡すことができなかった場合、新たにできるようになった権利が代金減額請求です。
追完請求を行った後に完全な状態に戻せなかった場合や、そもそも完全な状態にすることを怠った場合に請求できる、いわば追完請求のサブ的な権利といえます。
つまり手順としては、先に追完請求を行い、その結果によって代金減額請求ができるということです。
隠れた不具合が見つかってもすぐに代金減額請求ができるわけではありません。
まずは、追完請求を行い、その後完全な状態に戻すことができない場合の次の請求として代金減額請求権が請求できます。
今までの瑕疵担保責任とは異なり、代金減額請求権は段階的な請求といえるでしょう。
③:催告解除
これも追完請求のサブ的な権利といえます。
追完請求を行っても全く修繕の意思を売主が示さなかった場合、代金減額請求では、もともとの不動産を購入する目的を失してしまうかもしれません。
不動産を購入した目的を達することができないのであれば、契約を解除したいとなるでしょう。
追完請求し、修繕の意思がない場合、買主は必要がなくなる不動産になるかもしれません。
追完請求に対し、修繕の意思を見せない場合、買主は催告して契約を解除することができます。
これが催告解除です。
催告解除されてしまうと契約はなかったものとみなされますので売主は、売買代金を返還しなければいけません。
追完請求に対して売主が応じない場合すべてのケースで催告解除ができるかというとそうではありません。
軽微なケースでは催告解除ができませんので、注意しておきましょう。
④:無催告解除
契約不適合では、無催告解除もできるようになりました。
とても契約の目的を達することが出来そうにないケースにおいて、無催告で契約を解除することが可能です。
ただし、無催告解除ができるほどの、わからなかった不具合に限られます。
軽微なものと判断される場合には、認められません。
⑤:損害賠償請求
瑕疵担保責任同様、契約不適合責任においても損害賠償請求権が認められています。
しかし、売主が無過失だった場合には、損害賠償請求はできません。
あくまでも、売主に過失があった場合に限定されます。
瑕疵担保責任においては、売主の無過失責任を問われることになっていましたので、無過失であろうとも損害賠償請求が可能でした。
契約不適合積金では、この部分で大きく異なるといえるでしょう。
契約不適合責任に関する4つの注意点
瑕疵担保免責が、契約不適合責任へと変わったことで、いくつかの注意しなければいけない部分があります。
では契約不適合責任では、どのような点に注意しなければいけないのでしょうか?
ここからは契約不適合責任における注意点について解説します。
注意点①:時効について
瑕疵担保責任では、瑕疵を発見後1年以内に請求されたものに関して売主は責任を負うこととなっていました。
契約不適合も、瑕疵担保責任時と同様不具合を知ったときから1年以内に、不具合通知することにより、追完請求を行うことができます。
しかし、不具合を知ってから1年を越えると時効になりますので売主は1年以内の通知を心がけておきましょう。
注意点②:免責について
契約不適合責任は、瑕疵担保責任同様任意規定のため、契約書に記載していることを優先します。
つまり、契約書に契約不適合は免責だと記載すると免責とすることが可能です。
契約不適合の通知期間を短くすることも可能なので、契約不適合責任を免責としたい場合には必ず、売買契約書に記載しておく必要があります。
このあたりは、瑕疵担保責任と大きな変更はないように感じられますが、契約不適合責任はより詳しく免責部分に触れておかなければいけません。
免責事項をひとつひとつ記載しておく必要があります。
瑕疵担保責任と同じ部分もありますがより詳しく明示するという点は大きく異なりますので注意点といえるでしょう。
注意点③:個人間売買での注意点
個人間売買においての注意点として、はっきりと決定しているわけではありませんが代金減額請求権は設けられないかもしれません。
代金減額請求を行うことで、契約解除や損害賠償ができなくなる恐れがあるといった議論が進んでいるからです。
いったん代金減額請求を行ってしまうと、その売買契約は有効だと認識されてしまうので、その後契約解除や損害賠償ができない可能性があります。
前述しましたが、民法改正は2020年4月に改正されたばかりで、起こった問題に対して判例が積み重なっていないため方向性が定まっていないのです。
そのため、いったん個人間売買では代金減額請求は設置しないという方向性が固められつつあります。
不動産会社の場合はこの限りにありません。
このような点もしっかりと認識しておきましょう。
注意点④:設備に関する注意点
契約不適合責任の中には当然ながらその不動産だけではなく、付帯する設備にも含まれます。
設備に関する不具合は、引き渡し後に起こりトラブルが発生するケースが多く、後々の悩みの種となるのです。
このような問題を解消するために、設備に関してのみ契約不適合免責を明示することもできます。
設備に関しては、付帯設備全般に関しては契約不適合免責と記載しても大きな問題はなく、今後の売買契約書の多くはこの文言が明示されていることでしょう。
買主は特に注意しておく必要があります。
契約不適合責任に代わり不動産売買はどうなる?
瑕疵担保責任が契約不適合責任になったことで、変更点や注意点などを述べました。
では、実際に契約不適合責任へと変わり今後の不動産取引はどのようになるのでしょうか?
ここからは、契約不適合責任となったことによる不動産売買の変化について解説します。
①:買主の権利が増え、売主はより厳しくなる
契約不適合責任へと変わったことで、買主は瑕疵担保責任だった旧民法時よりもより多くの権利を有することになります。
つまりそれだけ、買主の権利が増え、売主に対する規制がかかるということになるでしょう。
旧民法のとき以上に売主は不動産の状況などを良く調査し、買主に伝えなければいけません。
②:インスペクションの活用がポイント
近年は、インスペクションを活用した不動産取引が増えています。
インスペクションとは、専門家が構造上主要な部分や外壁などをチェックし、不具合個所を指摘します。
インスペクションを不動産契約前に導入し、不具合個所を売買契約書に記載することにより、後々のトラブルを防ぐことが可能です。
売主は、売買契約書に不具合事項を記載し、免責にすることなどによって、後々のトラブルを防ぐ役割となります。
③:不動産会社の選択も重要
すこし前述しましたが、旧民法から新民法に改正されて日が浅いため判例などが積み重なっていません。
また、新民法の内容をきちんと把握していないまま売買の仲介を行っている不動産会社も見受けられます。
つまり、改正民法下における、不動産取引の内容をしっかりと仲介できる不動産会社選びも大きなポイントとなるのです。
不動産会社が仲介に入っているから安心というわけではありません。
しっかりと改正民法下における不動産売買の対策を十分に行っている不動産会社選びが非常に大事になるといえるでしょう。
まとめ
2020年4月に民法が改正されましたが、不動産取引の中で、瑕疵担保責任が契約不適合へと変わった点は、非常に大きな変更点です。
契約不適合責任へ変わったことにより、買主は新たに5つの権利を有することになりました。
売主は、不動産取引の中でより明確な責任が問われるようになりましたが一方、免責とすることも可能です。
瑕疵担保責任時も民法上の任意規定のため免責とすることは可能でしたが契約不適合責任も同様といえるでしょう。
しかし、より明確に免責となる部分の記載が必要ですので売買契約前にしっかりと不動産の状況を確認し、買主に伝えることを怠ってはいけません。
インスペクションなどを活用し、売買契約後のトラブルを極力なくしましょう。
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この記事を書いた人
資格:宅建・FP2級・通関士・総合旅行業務取扱管理者
大学生の時に一人旅に目覚め、海外50か国以上を訪れました。その経験を武器に新卒で旅行会社に入社しましたが、入社数年で倒産という憂き目にあってしまいます。悔しさをバネに宅建・通関士・FP資格を無職期間の4年でゲット!現在は不動産会社の窓口勤務ですが、コロナ渦で週休4日ペースが続いているため、新しい資格取得に向けて日々奮闘中です。趣味はペット。特技は英会話。
清水みちよ
30代女性