といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 不動産投資は個人と法人どっちがいい?
- 不動産投資で法人化するメリット
- 不動産投資で法人化するデメリット
- 不動産投資で法人化を検討する基準は?
- 不動産投資で法人化する流れ
「不動産投資したいけど何から勉強したらいいのか分からない…」そのようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
不動産投資をする場合、個人事業主として投資する方法と法人化して投資する方法に分かれます。
個人か法人として投資するべきか、判断に悩む方も多いものです。
基本的には、個人でスタートしてある程度の規模になったら法人化を検討するものですが、どのタイミングで法人化するべきなのでしょうか。
法人化には、メリット・デメリットがあるのでそれぞれ理解したうえでタイミングを検討する必要があります。
この記事では、法人化のメリット・デメリットと検討するタイミングや法人化の流れなど分かりやすく解説します。
これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。
【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!
続きを見る
不動産投資は個人と法人どっちがいい?
サラリーマンの副業として人気のある不動産投資。
家賃収入が得られ節税対策にもなるとして注目を集めているのです。
しかし、不動産投資が順調に進むと、所得が増えることで節税どころか税金が高くなってしまうケースもあります。
そのような場合に検討できるのが、投資の方法を「個人事業主」か「法人」という選択肢です。
個人事業主と法人の違い
そもそも、個人事業主と法人の違いはどのようなことなのでしょうか。
- 個人事業主:開業届を提出した事業を営む個人
- 法人:法律により権利義務を認められた組織
個人事業主とは、個人で事業を営む人のことを言い、税務署に開業届を提出するだけで誰でもなれるものです。
会社員は会社と雇用契約を結び会社に属している人であるのに対し、個人事業主は会社などに属さず自分で事業を営んでいます。
ちなみに、フリーランスとは特定の会社や団体に属さずに、自分で仕事を請け負う働き方を指しており、フリーランスで開業届を提出すると個人事業主になるのです。
一方、法人とは法律で認められた人格のことを指します。
法律上の人格を取得することで、商品の売買や納税など権利義務の主体となれるのです。
主な法人には、株式会社や合同会社と言った営利法人などがあり、これらの法人を設立することを法人化と言います。
不動産投資の法人化では、株式会社などの会社を設立し、会社で不動産の購入や管理・運営を行います。
投資家である代表者は、会社から役員報酬という形で収入を得るのが一般的です。
会社設立と言っても、不動産投資するためだけの会社であり個人事業主とほとんど変わらない形態というケースが多いでしょう。
しかし、法人と個人では「設立の手順」「税金」「社会的信用」が大きく異なります。
それぞれの大きな違いは以下の通りです。
個人事業主 | 法人 | |
開業手続き | 開業届の提出 | 法人登記や許可申請など法人により異なる |
資本金 | 不要 | 必要 |
開業費用 | 不要 | 30万円程 |
税金 | 所得税・住民税 個人事業税 消費税 | 法人税 法人住民税 消費税 法人事業税 |
不動産投資を個人事業主としてする場合については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
>> 不動産投資は個人と法人どっちがいい?個人事業主で始めるメリット・デメリットや開業の流れを解説
不動産投資は個人と法人どっちがいい?個人事業主で始めるメリット・デメリットや開業の流れを解説
続きを見る
事業規模が大きい場合は法人がおすすめ
基本的には、個人事業主として不動産投資をスタートし規模が大きくなった時点で法人化を検討する流れをおすすめします。
どの時点で法人化するのかは、法人化のメリット・デメリットを理解したうえでタイミングを判断することが大切です。
法人化のメリット・デメリットについては、以下で解説するので判断の目安としてください。
不動産投資で法人化するメリット
不動産投資を法人化するメリットには、次の4つが挙げられます。
- 収入が大きい場合は個人より税率が低くなる
- 経費の範囲が広くなる
- 会社ごと相続できる
- 融資の条件面で有利になる
それぞれ詳しく見てきましょう。
メリット①:収入が大きい場合は個人より税率が低くなる
不動産投資で収入を得た場合、個人と法人ではそれぞれ次のような税金が課せられます。
法人 | 個人事業主 | |
税金 | 法人税 法人住民税 法人事業税 消費税 | 所得税 住民税 |
法人と個人で課せられる税金の税率が異なるため、一定額以上になると個人よりも法人のほうが納める税金が低くなるという特徴があるのです。
法人の場合、法人税の税率は以下のようになります。
区分 | 税率 | |
資本金1億円以下の普通法人 | 年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% | |
上記以外の普通法人 | 23.20% |
法人税は、所得に大きく左右されず、ほぼ一律で課税されます。
法人の場合、法人税に加え法人住民税なども課税されるものです。
それらの課税されるすべての税率を合計したものを「法人実効税」と呼び、地域などにより異なりますがおおよそ30%~35%程になります。
それに対し、個人では不動産投資の収入は、所得税・住民税の課税対象となります。
所得税は、所得額応じて課税率が異なり以下の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
また、住民税は所得額に関わらず、所得に対して一律10%課せられます。
そのため、所得税+住民税では最大55%もの課税となるのです。
さらに、個人事業主の場合は、本業などの収入と不動産投資の収益を合算して申告しなければならないので、高額になりやすいでしょう。
仮に、法人実効税が35%の場合、個人の所得が900万円を超えると所得税+住民税が43%の課税となり、法人に課せられる税金のほうが低くなります。
このように、高額な所得がある人ほど法人化したほうが、税金を抑えられるというメリットを大きく活かせるのです。
メリット②:経費の範囲が広くなる
法人で不動産投資するメリットには、経費計上できる幅が広くなるという点もあります。
個人事業主でする場合も、副業として投資するよりもある程度経費計上できる項目は広がります。
しかし、法人でした場合は個人事業主よりもより大きな経費計上が可能になるのです。
基本的に、法人では利用する費用は事業のためという前提があるため、ほどんとの費用を経費計上できます。
一方、個人事業主では事業とプライベートの費用が混同されるケースもあるため、経費計上できる項目が狭くなるのです。
個人事業主で経費計上できず法人では計上できる経費には、次のようなものがあります。
- 自分と家族の給与
- 家賃(社宅)
- 福利厚生費
- 出張経費や日当
- 賞与や退職金
このように、経費計上できる幅が広がるため利益の圧縮もしやすくなるという点もメリットと言えるでしょう。
メリット③:会社ごと相続できる
不動産投資を法人化する目的の一つに、相続税対策という点もあります。
不動産投資で不動産を所有する場合、個人事業主であれば個人の資産となるため相続税の対象となります。
一方、法人化した場合、不動産は個人の資産ではなく会社の資産となるため、相続税の対象とはならないのです。
そもそも、相続や贈与は、個人間での資産の移動となるため、法人では相続税や贈与税という概念はありません。
個人の資産を法人に移動することで、相続税の対象となる資産を減らせられ相続人の負担を減少できるでしょう。
また、法人の場合家族に給与を支払えるため、個人の資産を生前で分配するのにも役立ちます。
支払った給与は経費計上できるので、法人税などの節税にもつながるでしょう。
ただし、法人で株を所有している場合、株式は相続税の対象となるので事前に対策が必要な点は注意が必要です。
不動産投資を法人でする場合の相続については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
>> 不動産投資で法人化することによる相続に関する3つのメリットを解説!
不動産投資で法人化することによる相続に関する3つのメリットを解説!
続きを見る
メリット④:融資の条件面で有利になる
法人化した場合、融資の面でも個人事業主よりも有利になるというメリットがあります。
個人事業主として融資を受ける場合、次のような制限がかけられるものです。
- 融資の上限(年収の〇倍・〇〇万円まで)
- 借入期間や年齢(完済時〇〇歳まで)
一方、法人として融資を受ける場合、上記のような制限がないケースが多くなります。
また、金融機関も個人事業主よりも法人への融資を積極的にしている傾向があるものです。
そのため、個人事業主では年収などの属性が厳しく融資が難しい場合でも、法人であれば融資を得られる可能性があります。
不動産投資では、2棟目以降と投資規模を大きくする場合融資が不可欠になります。
投資規模を大きくしたいなら、法人化して融資を受けやすくするのを検討するのも良いでしょう。
不動産投資で法人化するデメリット
不動産投資で法人化するデメリットには、次のようなことがあります。
- 収入が低い場合は税率が個人よりも高くなる
- 赤字でも税金を払う必要がある
- 税理士報酬などの維持費用がかかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
デメリット①:収入が低い場合は個人より税率が高くなる
収入が高い場合は個人よりも税率が低くなるというメリットがありますが、反対に収入が低ければ個人よりも税率が高いというデメリットにもなります。
仮に、不動産投資での収益200万円、給与所得300万円で見てみましょう。
個人事業主として不動産投資した場合、税金は次のようになります。
- 課税所得=200万円+300万円=500万円
- 所得税=500万円×20%-427,500円=572,500円
- 住民税=500万円×10%=500,000円
- 所得税+住民税=572,500円+500,000円=1,072,500円
一方、法人で実効税率を35%と仮定した場合は次のとおりです。
- 法人の納税額=200万円×35%=700,000円
- 個人の所得税=300万円×10%-97,500円=202,500円
- 個人の住民税=300万円×10%=300,000円
- 納税額合計=700,000円+202,500円+300,000円=1,202,500円
上記のように、法人として投資した場合のほうが納税額は大きくなります。
法人として投資する場合、所得がいくらからメリットがあるのかを一度計算したうえで、法人化のタイミングを検討することが大切です。
デメリット②:赤字でも税金を払う必要がある
法人の場合、所得がマイナスでも税金を払わなければならない点には注意しましょう。
個人事業主の場合、所得がマイナスであれば給与所得と損益通算でき、所得税・住民税を抑えられるというメリットがあります。
一方、法人の場合は所得がマイナスでも、法人の所得と個人の所得は別物のため合算はできません。
そのうえで、法人税や法人事業税は所得がマイナスであれば発生しませんが、法人住民税はマイナスでも発生するのです。
地域により金額は異なりますが、東京都の場合年間で7万円の法人住民税が所得額に関わらず発生します。(資本金1千万円以下・従業員50人以下で均等割りの場合)
赤字でも納税が発生するため、経営が厳しい場合は負担が大きい点には注意しましょう。
デメリット③:税理士報酬など維持費用がかかる
法人の場合は会計処理が複雑になるため、基本的には税理士を雇って対応するのが一般的です。
税理士を雇う以上税理士報酬が発生し、年間50万円~70万円が目安となるでしょう。
また、法人設立のための費用も掛かります。
法人の種類によっても異なりますが、一般的には30万円前後必要でしょう。
さらに、書類や印鑑などの作成の手間もかかるものです。
個人事業主の場合、開業届を提出するだけと手続きは簡単で、費用も掛かりません。
確定申告も、会計ソフトなどを利用すれば個人でも難しいものではないでしょう。
その点、法人では初期費用と維持費用がかかってくるので、どれくらいの費用がかかるのかを計算しておく必要があります。
不動産投資で法人化を検討する基準は?
ここでは、法人化を検討する基準について解説します。
大まかな基準としては、次の2つがあります。
- サラリーマンで給与所得が900万円超
- 専業で不動産所得が330万円超
ただし、この基準はあくまで参考です。
投資スタイルや収入などで人によって基準は大きく異なります。
判断材料の一つとして自分の基準のシミュレーションの際に役立ててください。
サラリーマンで給与所得が900万円超
法人化を検討する一つのタイミングが、法人税が個人の所得税・住民税の税率を上回るタイミングです。
そのタイミングが、給与所得が900万円を超え、さらに不動産投資が黒字のタイミングとなります。
給与所得が900万円の場合、所得税+住民税の税率は43%、法人実効税率が30%~35%なので、個人税率>法人税率となるのです。
その状態で、不動産所得が黒字であれば所得を相殺できないので、個人では不動産所得もプラスされた高い税率が課せられてしまいます。
仮に、不動産所得200万円・給与所得900万円でみてみましょう。
個人
- 所得税=(200万円+900万円)×33%-1,536,000円=2,094,000
- 住民税=(200万円+900万円)×10%=1,100,000円
- 個人税合計=2,094,000+1,100,000円=3,194,000円
法人(法人実効税33%と仮定)
- 法人に掛かる税金=200万円×33%=660,000円
- 個人所得税=900万円×33%-1,536,000円=1,434,000円
- 個人住民税=900万円×10%=900,000円
- 合計税額=660,000円+1,434,000円+900,000円=2,994,000円
上記のように、法人に掛かる税金が低くなります。
所得によっては50万円以上の差が出ることもあるでしょう。
その場合、月額4万円以上のお金が手元に残る計算となるので、不動産運営の収支をよりよくできる可能性があるのです。
専業で不動産所得が330万円超
不動産投資を専業にして所得が330万円を超えるときも、法人化を検討する一つのタイミングと言えます。
専業の場合、給与所得がないので若干計算方法が異なりますが、大まかな税率は以下の通りです。
- 個人:30%(所得税+住民税)
- 法人:30%~35%
地域によっては、法人に掛かる税率が30%を下回る場合もあるので、法人化したほうが税金を抑えられる可能性が高くなります。
地域や個人の所得、不動産投資のスタイルによって法人化のタイミングは異なりますが、基本的には「個人税率>法人実効税」となったタイミングで一度検討するとよいでしょう。
不動産投資で法人化する流れ
不動産投資で法人化する大まかな流れは以下の通りです。
- 定款認証
- 登記申請
- 開業届を提出
- 青色申告承認申請書を提出
それぞれ詳しく見ていきましょう。
手順①:定款認証
定款とは、会社運営の基本的なルールを定めた文章のことをいい、次のような項目を定めます。
- 事業目的
- 商号
- 本社の所在地
- 資本金額
- 発起人(出資者)
- 発行可能株式総数
- 設立時取締役や代表取締役
定款認証とは、作成した定款を公証役場で証明を受けることを言います。
ただし、定款認証が必要なのは株式会社の設立のみで、合同会社などは不要というように会社の形態によって異なるので注意しましょう。
定款の作成や認証は、複雑で個人で作成するのは難しいため、司法書士に依頼するのが一般的です。
また、前準備として代表者印・社印を用意しておくようにしましょう。
手順②:登記申請
会社は登記することで設立されるものです。
そのため、定款認証後に登記申請書を作成して、法務局で登記手続きをします。
登記申請の記載事項は法律で定められており、記載ミスなどでは申請が却下される可能性があるものです。
個人での申請は難しいので、司法書士に依頼することをおすすめします。
手順③:開業届を提出
会社設立後、管轄の税務署に「法人設立届出書」を提出します。
会社を設立したら、税務署に税金を納める必要があり、そのために会社の概要を知らせるための手続きが、この法人設立届書となるのです。
法人設立届出書は、どのような会社形態であっても提出が必要になり、設立後2か月以内という提出期限もあるので注意しましょう。
手順④:青色申告承認申請書を提出
開業届の提出と同時に、青色申告承認申請書を提出するとよいでしょう。
青色申告承認申請書を提出することで、確定申告での青色申告が可能になります。
法人で青色申告するメリットには、次のようなことがあります。
- 欠損金を最長9年間繰越控除できる
- 欠損金を前期の黒字祖相殺でき法人税の還付を受けられる
- 30万円未満の減価償却資産を経費に一括計上できる
青色申告することで多くのメリットがあるので、法人では活用することをおすすめします。
法人の場合、会社設立日から3ヵ月以内に提出する必要があるため、開業届と当時に手続きしておくとよいでしょう。
まとめ
不動産投資で法人化するメリット・デメリット、タイミングの判断基準についてお伝えしました。
不動産投資を法人化するタイミングの判断基準の一つは、個人の税率が法人の税率を上回った時です。
その場合、法人での税金を低くできるためメリットが大きくなるでしょう。
ただし、法人化には法人設立の費用や維持費用がかかるため、所得と税金・費用を比較して慎重に判断することが大切です。
この記事を参考に、不動産投資の法人化まで視野に入れ投資計画を立てて投資スタートするとよいでしょう。
マンションの売却や買取なら不動産情報サイトMANSION COLLECTのTOPへ戻る
この記事を書いた人
資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)
地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。
逆瀬川勇造
30代男性