不動産投資

不動産投資で毎月赤字!赤字にもメリットがあるって本当?よい赤字と悪い赤字の事例を解説

不動産投資で毎月赤字です。赤字にもメリットがあるって聞いたのですが、本当でしょうか?

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 不動産投資における赤字とは?
  • 不動産投資の赤字にはメリットもある?
  • 不動産投資の赤字で節税を狙うのは注意が必要
  • 不動産投資で赤字になる3つのケース

不動産投資では、「空室が出た」や「返済額が大きい」などの理由で収入と支出のバランスが取れずに赤字になることがあります。

せっかく不動産投資しても赤字経営では意味がない、と思われる方も多いでしょう。

しかし、不動産投資の場合赤字であってもメリットとなる可能性もあるのです。

ただし、メリットのある赤字と問題のある赤字があるので、注意しなければなりません。

この記事では、不動産投資の赤字のメリットや注意点について分かりやすく解説します。

併せて、赤字になる具体的なケースも紹介するので投資の参考にしてみてください。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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不動産投資における赤字とは?

不動産投資における赤字とは?

不動産投資の利益は「不動産所得」と呼ばれ、家賃などの収入から経費を差し引いた額です。

そのため、収入よりも経費などの支出が上回る状態が赤字となるのです。

不動産所得=収入-支出(経費)

  • 収入<支出:赤字
  • 収入>支出:黒字

収入としては、次のような項目があります。

  • 家賃収入
  • 家賃とは別に設定する駐車場収入
  • その他の収入(敷地内に設置する自動販売機など)

また、支出として計上できる必要経費には、主に次のような項目が該当します。

  • 固定資産税や都市計画税
  • 保険料
  • 修繕費
  • 管理費
  • 広告宣伝費
  • 減価償却費
  • ローンの利息部分
  • 通信費や交通費・雑費など

上記のような支出の合計額が収入を上回る赤字経営となるのです。

と赤字が続くと、自己資金で対応しなければならず投資の継続が難しくなります。

ただし、不動産投資の場合、赤字だからといって一概に問題有と言うわけではないのです。

不動産投資では、会計上の赤字と手元に残るお金であるキャッシュフローが一致しないという特徴があります。

代表的な例が減価償却と言う実際の支出を伴わない経費計上による赤字です。

減価償却を利用すれば、会計上は赤字でも手元には資金が残っているということができます。

ただし、反対に会計上は黒字なのに手元に資金がないというケースもあるのです。

そのため、赤字と言ってもその内容によって「よい赤字」と「悪い赤字」があると言えます。

不動産投資の赤字にはメリットもある?

不動産投資の赤字にはメリットもある?

よい赤字といっても赤字であることには変わりません。

では、なぜ赤字が良いとされるのでしょうか。

実は、不動産投資では赤字にすることでメリットを得られるという特徴があるのです。

よい赤字であれ悪い赤字であれ、赤字であることでメリットは受けられますが、よい赤字の状態でメリットを受けることで不動産投資の効率をよりよくできるでしょう。

不動産投資での赤字のメリットには、次のようなことがあります。

  1. 税金を支払う必要がない
  2. サラリーマンの場合損益通算できる
  3. 赤字は翌年以降に繰り越すことができる

それぞれ見ていきましょう。

メリット➀:税金を支払う必要がない

不動産所得には、所得税・住民税が課せられます。

しかし、不動産所得が赤字の場合はこれらの税金は課せられないのです。

そのため、会計上のみ赤字にすることで税金を支払う必要がなくなり、その分手元に多くのお金を残せます。

メリット②:サラリーマンの場合損益通算できる

損益通算とは、不動産所得の赤字と給与所得など他の所得区分の黒字を相殺して申告する仕組みのことです。

サラリーマンの副業として不動産投資する場合、本業の給与収入と不動産所得を相殺でき、所得税の還付を受けられる可能性があります。

例えば、不動産所得で300万円の赤字・給与所得500万円の場合を見てみましょう。

サラリーマンでは、毎月の給与から所得税天引きされ、年末調整で誤差分を調整することで納税が完了します。

この場合は、500万円の所得に対する所得税を納付済みです。

そのうえで、不動産所得と給与所得を損益通算して、以下の所得額で確定申告します。

課税所得=500万円(給与所得)-300万円(不動産所得の赤字)=200万円

不動産所得の赤字で給与所得を圧縮でき、課税対象の所得額が低くなります。

この場合、200万円が所得税の対象となるため、すでに納税済みの所得税から300万円の所得に対する所得税額が納めすぎとして還付されるのです。

所得税は所得額が高くなるほど税率も高くなる累進課税制度のため、給与所得が高い人ほど損益通算のメリットが大きくなります。

ちなみに、住民税は前の年の所得に対して課税されるため、還付はありません。

ただし、住民税の対象となる所得税額が小さくなることで、翌年納税する住民税額を抑えられるのです。

「不動産投資が節税に効果がある」と謳われるのは、この損益通算の仕組みを利用した所得税・住民税の節税効果があるからと言えます。

不動産投資の損益通算については、不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説で詳しく解説しています。

不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説

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メリット③:赤字は翌年以降に繰り越すことができる

不動産投資の赤字は、その年だけでは相殺できない分は翌年以降最高3年間繰越すことが可能です。

このことを繰越控除と言い、繰越控除を活用することで節税効果が見込めます。

仮に、不動産投資で600万円の赤字・給与所得が毎年250万円の場合は次のとおりです。

なお、不動産投資2年目の収益は計算を簡略化するため考慮しないものとします。

1年目:250万円-600万円(損益通算)=-350万円
2年目:250万円-350万円(繰越控除)=-100万円
3年目:250万円-100万円(繰越控除)=150万円

上記のように、1年目・2年目は所得がマイナスのため所得税・住民税が課せられません。3年目にも、所得が抑えられるので所得税・住民税の減額が見込めるのです。

ただし、3年間繰越しても相殺しきれない赤字は4年目には持ち越せないので注意しましょう。

また、確定申告を青色申告することで「青色申告特別控除」を活用でき、所得を抑える効果を高めることが可能です。

青色申告特別控除とは、一定の書式を備えて青色申告することで最大65万円を控除できる仕組みのことを言います。

不動産所得がプラスであっても控除として65万円を差し引くことで、所得額を圧縮でき節税効果を見込めるでしょう。

不動産投資の赤字で節税を狙うのは注意が必要

不動産投資の赤字で節税を狙うのは注意が必要

不動産所得の赤字にはメリットがあるとお伝えしましたが、赤字である以上注意しなければならない点もあるものです。

特に会計上もキャッシュフロー上も赤字となる「悪い赤字」の場合は気を付けなければ、不動産投資の失敗につながる可能性があります。

注意点としては次のようなことがあります。

  1. そもそも赤字=利益が出ていないことに注意
  2. 2棟目以降の融資を受けづらくなる

注意点➀:そもそも赤字=利益が出ていないことに注意

不動産所得が赤字と言うことは、利益が出ていないということを意味しています。

青色申告特別控除や減価償却を利用した会計上は赤字で、手元にはお金が残っているという状態なら大きな問題はないでしょう。

しかし、「収入が少ない」「実際に経費が多くかかった」というような本当の赤字は問題と言えます。

不動産投資の本来の目的は、収益を上げて収支を黒字にすることです。

節税目的のためといって赤字経営を続けていては、本末転倒ともいえるでしょう。

本来の目的を見失わずに、そのうえで上手に節税することが大切です。

注意点②:2棟目以降の融資を受けづらくなる

赤字経営の状態では、金融機関からの融資を受けにくくなる可能性があります。

不動産投資では、2棟目・3棟目と投資を拡大していくことが重要になるものです。

その際2棟目以降の融資を受ける場合、1棟目の経営状態も審査の対象となります。

1棟目で赤字経営が続いていると、金融機関からの印象が悪く融資を受けられない可能性が高くなるので注意しましょう。

不動産投資で赤字になる3つのケース

不動産投資で赤字になる3つのケース

不動産投資での赤字とは、どのようなケースがあるのでしょうか。

ここでは、具体的な赤字のケースについて見てきましょう。

次の3つのケースで、赤字の原因や対策について解説します。

  1. 空室が増えて赤字に転落(悪い赤字)
  2. アパートローン返済額で赤字に転落(悪い赤字)
  3. 減価償却で赤字(よい赤字)

その➀:空室が増えて赤字に転落

悪い赤字の事例の代表的なものが、空室による赤字です。

不動産投資では、家賃収入を得られなければ収入がゼロになります。

収入が得られない期間が増えれば、その分の家賃収入が得られないばかりかローン返済などの支出は必要になるので、収支の悪化がひどくなるものです。

仮に、賃料8万円で3部屋運営し、そのうち1部屋が1年間空室だとします。

年間経費を120万円・ローン返済額が年間120万円必要な場合を見てみましょう。

空室が出ない場合の家賃収入は、年間288万円です。

しかし、1部屋が1年間空室のため8万円×1部屋×1年=96万円の収入が得られず、年間収入は192万円になります。

この状態で、経費とローン返済額を支払うと、48万円の赤字となるのです。

赤字の分の費用は自己資金から持ち出す必要があり、自己資金状況では不動産投資の継続も危ぶまれます。

さらに、突発的な修繕が必要になれば赤字はより大きくなるでしょう。

このように、空室による赤字は収支のマイナスに大きく関わる重要なポイントのため、早急に対応する必要があります。

空室対策としては、次のような方法があります。

  • 入居者ニーズのある物件の見極め
  • いい管理会社を選ぶ
  • 定期的なメンテナンスや設備・間取りのリフォーム
  • サブリース契約の検討

物件を選ぶうえでは、物件の状態だけでなく立地や周辺環境・エリアの人口推移・賃貸ニーズなど入居者のニーズをしっかりリサーチして判断することが重要です。

また、日常的な管理や入居者の募集を委託する場合は管理会社の選ぶ方も大切です。

入居者募集に強みがあるなど管理会社の実績や評判・サービスを総合的に判断して信頼できる管理会社を選ぶようにしましょう。

入居者に選ばれる物件であるための物件のメンテナンスや設備を最新のものにするなどの工夫も有効的です。

空室の赤字を防ぐには、サブリース契約を検討するという手段もあります。

サブリース契約とは、管理会社に物件を借り上げてもらうことで入居者の有無にかかわらず一定の収入を得る契約方法です。

入居者がいなくても収入を得られるため安心して不動産投資できるというメリットがあります。

ただし、契約内容や条件・手数料は契約する会社によって大きく異なり、契約内容によっては収入が少ない可能性もあるので注意しましょう。

その②:アパートローン返済額で赤字に転落

悪い赤字としてもう一つの代表的な例が、ローン返済額の負担が大きく赤字に転落するケースです。

不動産投資では基本的に金融機関から融資を受けて不動産を購入するため、必ず毎月の返済が発生します。

融資を検討する際には、家賃収入の範囲内で返済できるのかをしっかりとシミュレーションすることが大切です。

例えば、次の条件で融資を受けた場合の返済額を見てみましょう。

  • 融資金額:1,500万円
  • 借入期間:20年間
  • 金利:2%

上記の場合、毎月の返済額は75,882円・年間910,584円となります。

そのため、必要経費が毎月3万円であれば家賃収入をつき10万円以上確保する必要があるのです。

ローン返済額の負担で赤字になる場合、空室などで想定していた収入を得られないケースやそもそもの収支計画に問題があるケースがあるでしょう。

空室で収入を得られない場合は、先述したような空室対策で早急に対応する必要があります。

ただし、事前の収支計画自体に問題がある場合など、返済の見込みが厳しい場合は売却も視野に入れることおすすめします。

その③:減価償却で赤字

不動産投資での赤字には減価償却を活用した赤字もあります。

減価償却を活用した赤字の場合、実際のキャッシュフローが黒字であれば「よい赤字」と言えるでしょう。

減価償却とは、不動産の購入費用を償却期間に按分して費用計上する会計上の処理のことを言います。

仮に1,000万円の不動産を購入した場合、購入した年に一括で計上するのではなく、10年に渡り毎年100万円ずつと言う形で計上するのです。

減価償却は、実際の支出の伴わない経費のため会計上は赤字でも実際には手元にお金が残る状態にできます。

原価償却を上手に活用することで節税効果を狙えるよい赤字にできるでしょう。

ただし、償却期間は物件の構造に左右されるため、物件によっては減価償却の効果が少ないものもあります。

償却期間や償却額は法定耐用年数応じて設定され、主な耐用年数は構造によって次のようになります。

  • 木造:22年
  • 鉄骨造り(3mm超4mm以下):27年
  • 鉄筋鉄骨コンクリート:47年

また、中古で購入した場合は次のように計算されます。

  • 耐用年数未満の物件:(耐用年数-経過年数)+(築年数×20%)
  • 耐用年数超の物件=耐用年数×20%

仮に、鉄筋鉄骨コンクリート造りの物件(築年数35年)を1,500万円で購入した場合の償却期間・償却額は次のとおりです。

  • 償却期間:47年-35年+(35年×20%)=19年
  • 償却額:1,500万円×0.053(償却率)=79.5万円

上記の場合、毎年79.5万円を19年に渡り費用計上できます。

物件によっては償却額が20万円前後になることも珍しくなく減価償却の効果を得にくくなるのです。

物件を選ぶ際には、減価償却額についても一度計算したうえで検討するとよいでしょう。

減価償却を利用した赤字は「よい赤字」に該当しますが、本来の投資の目的を見失わず少しでも利益を多くする努力は必要と言うことは覚えておくことが大切です。

まとめ

不動産投資の赤字について、メリットや注意点をお伝えしました。

不動産投資の赤字の場合、良い赤字であれば節税効果が見込めるなどのメリットがあります。

しかし、赤字にすることでキャッシュフローが悪化し、不動産投資の継続も難しくなるような問題のある赤字経営ではメリットどころではありません。

不動産投資の目的は収益を上げることであるため、まずは黒字経営を目指すことが大切です。

そのうえで赤字でのメリットを十分に活用できるようにするとよいでしょう。

この記事を参考に、不動産投資の赤字について理解し、不動産投資の成功を目指しましょう。

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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