といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 不動産投資で法人化する相続に関するメリット①:相続税の節税対策になる
- 不動産投資で法人化する相続に関するメリット②:相続準備できる
- 不動産投資で法人化する相続に関するメリット③:遺産分割しやすくなる
- 不動産投資で法人化する3つのスキームとそれぞれの仕組み
不動産を所有している人の悩みの一つである相続税。
所有する不動産によっては、高額な相続税が課せられてしまい相続人が苦労してしまうこともあるでしょう。
相続税の対策として、不動産投資の法人化という選択肢があります。
この記事では、不動産投資を法人化することでの相続税に関するメリットや具体的な法人化のスキームについて分かりやすく解説していきます。
これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。
【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!
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不動産投資で法人化する相続に関するメリット①:相続税の節税対策になる
不動産投資を法人化することで、相続税の節税対策ができるというメリットがあります。
相続税では、所有している資産に応じて課せられるものです。
所有している財産が多ければ、それだけ高額な相続税が相続人に課せられます。
しかし、法人化することで相続税の対象となる資産の所有者を「個人」と「会社」に分けられるため、相続税の節税につながるのです。
個人で不動産を所有すると相続税の課税対象になる
個人で不動産を所有している場合、その不動産は個人の資産となり相続時の相続税の対象となります。
相続税は、相続資産から基礎控除を除いた資産額に対して課せられるものです。
- 相続税=(相続財産の総額-基礎控除額)×相続税率
- 基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人数
仮に、1億円の資産を3人の相続人で相続する場合の課税対象額は、以下の通りです。
なお、今回は利用できる他の控除については計算に入れずに算出しています。
- 基礎控除=3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税対象額=1億円-4,800万円=5,200万円
上記の場合、5,200万円に相続税率を乗じた額が相続税額となります。
相続税率は、相続財産に応じて異なり以下の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上記の例で5,200万円の相続資産の場合、相続税は次のとおりです。
相続税=5,200万円×30%-700万円=860万円
相続税は、相続資産が高額になればその分相続税も高額になるため、相続人が対応に苦しむケースもあるものです。
相続財産が高額になる場合、事前に相続税対策をしておく必要があります。
法人で不動産を所有している場合株式のみ相続税の課税対象になる
そもそも、相続税とは「個人の資産を個人に無償で移転」する際に課せられるものです。
そのため、個人ではない会社が所有する資産については、会社の財産であり相続税の対象とはなりません。
これは贈与についても同様のことが言えます。
つまり、法人化して資産を会社所有にすることで、不動産は相続税や贈与税の課税対象とならなくなるのです。
個人の資産として所有している場合、基礎控除額以上の財産がある場合、相続税の対象となります。
しかし、個人の資産を法人の所有にすることで個人の資産を減少でき、相続税を抑えられるのです。
ただし、法人化して株式を保有する場合は注意が必要です。
株式は相続税の対象となる財産のため、自分で株式を保有した場合、相続人には株式の分の相続税が発生します。
株式を保有する場合は、生前から株式の相続税対策もしっかりしておくことが大切です。
不動産投資で法人化する相続に関するメリット②:相続準備できる
不動産投資の法人化のメリットとしては、相続準備ができるという点もあります。
相続税は原則現金で支払う必要がある
相続税は、現金一括で支払うのが原則です。
また、支払は相続開始後10ヵ月までという支払期限もあります。
期限内に支払えない場合は、遅れた日数に応じた延滞税が課せられてしまうのです。
ただし、相続税は高額になるケースが多いため一括納税できない場合は、延納制度を利用することもできます。
延納を利用することで、支払えない部分を最長20年の範囲で分割して納付が可能になるのです。
また、延納制度を利用して納付が難しい場合は、物納と言う手段もあります。
物納では、相続財産を現金の代わりに納める方法です。
しかし、延納・物納には利用するための条件があるため簡単には利用できない点には注意が必要しましょう。
基本的には、現金一括での納付となるため相続人が相続税の支払いに苦しまないように準備しておくことが大切です。
特に、不動産を所有して現金が少ない場合は、相続税を支払うのが難しくなる可能性があります。
法人に不動産を所有させることで、相続への準備となるでしょう。
法人化して相続人に給与を支払うことが可能
法人の場合、配偶者や親族を会社の役員にして給与を支払うことが可能です。
そのため、相続準備として相続人になる予定の人と社員にして給与を支払い、相続が発生した場合の相続税としてその給与を支払いに充てることが検討できます。
また、個人の所得を分配することにもつながるので、相続税の対象となる資産の減少も可能です。
支払った給与は経費に計上できるため、所得を分配しながらも節税効果を狙える点もメリットと言えます。
不動産投資で法人化する相続に関するメリット③:遺産分割しやすくなる
不動産を法人が所有することで、遺産分割しやすくなるというメリットがあります。
相続した財産は、遺言での指定がない限り相続人が話し合って具体的な分割方法を決めるものです。
金銭であれば、1円単位で分割できるので相続人に公平に分割できますが、不動産の場合は簡単には分割できません。
不動産は、同じものが存在しない財産なうえにお金のように細かく分割もできないものです。
そのため、相続財産に不動産が含まれていると遺産分割でトラブルが発生するケースも珍しくないのです。
一方、不動産を法人が所有していれば、そもそも相続財産に含まれないため分割の必要もなく、遺産分割をスムーズに進められます。
不動産は分割しにくい資産
相続財産の中に不動産が含まれている場合、以下の方法で分割を検討します。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
それぞれ詳しく見てみましょう。
現物分割
現物分割とは、現物=そのままの状態で相続する方法をいいます。
例えば、相続人のうち一人が不動産を相続することや、土地であれば複数の相続人で分筆して相続するなどの方法があるでしょう。
現物分割であれば、相続手続きは簡単に進められます。
ただし、特定の人が相続財産を独り占めしてしまうなどの相続人間での不平等につながる可能性もあるので、慎重に協議する必要があるのです。
換価分割
換価分割とは、不動産といった現物資産を売却などして現金に換金して、そのお金を相続人で分割する方法のことをいいます。
仮に、不動産が5,000万円で売却でき、500万円の経費が掛かった場合は、経費を除いた4,500万円を相続人で分割するのです。
換価分割は、不動産を売却したお金を公平に分割できるので相続時のトラブルを避けられる可能性が高くなります。
ただし、売却を急ぐ場合などでは安値での売却になってしまい、相続できる金額が低くなるケースもあります。
代償分割
代償分割とは、1人が財産を相続し、他の人に相続割合に応じた代償金を支払う方法です。
例えば、6,000万円の不動産を1人が相続し、相続人が他に2人いるとします。
本来であれば、3人がそれぞれ2,000万円ずつ相続するものです。
そこで、不動産を相続した相続人が残り2人の相続人に2,000万円ずつ代償金を支払って解決させます。
共有分割
共有分割とは、一つの不動産を複数の人が共同で所有することをいいます。
例えば、3人の相続人が一つの不動産を相続した場合、それぞれの持ち分に応じた割合で不動産を共有するのです。
共有分割の場合、複数の人に所有権があるため不動産の活用がしにくいというデメリットがあります。
また、共有者が死亡してさらに相続が発生すると問題が複雑化してしまうケースもあるのです。
相続する場合は、できるだけ共有分割は避けることをおすすめします。
法人化すれば不動産の移転登記不要
法人化した場合、不動産の所有者は会社のため、相続人が相続するのは株式のみです。
個人の資産として不動産を相続する場合、相続後に相続人が不動産の移転登記をしなければなりません。
移転登記では、登記の手続きに費用や準備が掛かるものです。
法人化することで、これらの手間や費用を省けるというメリットもあります。
株式を相続人間で共有することも可能
法人の場合、株式の相続が発生する点には注意が必要です。
株式は相続人に応じて当然に分割されるわけではなく、分割には遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議前や協議でも割合が決まらない場合は、準共有状態となります。
例えば、100株の株式を配偶者と子供2人で相続する場合、法定持ち分では配偶者が50株・子供がそれぞれ25株ずつ相続します。
しかし、遺産分割されるまでの間は、相続人である3人で共有しているという形になるのです。
株式を共有する場合、株式の売却や権利行使が難しくなり会社の経営がやりにくくなる可能性があるので注意しなければなりません。
株式の相続が発生する場合も、事前に対策しておくことで相続人がその後の経営をスムーズにできるようになるでしょう。
不動産投資で法人化する3つのスキームとそれぞれの仕組み
ここでは、具体的な不動産投資での法人化の仕方について解説します。
法人化スキームとしては、次の3つがあります。
- 管理委託方式
- サブリース方式
- 不動産保有方式
それぞれの仕組みについて詳しく見ていきましょう。
その①:管理委託方式
管理委託方式とは、不動産の名義は自分のものとして不動産の管理をする管理会社として法人を設立する方法です。
個人でする不動産投資の場合、不動産の管理や入居者の募集・賃料管理などは外部の管理会社に委託するケースが多いでしょう。
この法人化の場合、その不動産管理をする法人をあえて設立して、個人の不動産所得の軽減を狙います。
具体的には、自分名義の不動産での家賃収入の一部を、設立した管理会社に委託料として支払います。
委託料は管理会社の収入となり、そこから不動産管理の費用が賄われます。
個人の不動産所得では、委託料は経費として計上できるため個人の所得の軽減ができ、税金の負担を抑えられるのです。
ただし、一般的な管理会社への委託料は家賃の10%前後が目安のため、相場よりも明らかに高い管理料を支払う形にすると税務署からチェックを受ける可能性があります。
管理委託方式は、他の法人化に比べ比較的簡単にスタートできるという特徴があります。
しかし、法人の収入が家賃の10%程度となるため、そのための法人を設立・維持することが効率的なのかは慎重に検討するとよいでしょう。
その②:サブリース方式
サブリース方式とは、個人が所有する不動産を、設立した不動産管理会社に転貸借する方法です。
設立した不動産管理会社で不動産を一括借り上げし、個人(オーナー)に対して借り上げ料を支払います。
不動産管理会社では、入居者からの家賃収入を得ることができ、この家賃収入と借り上げ料の差が収益となるのです。
また、不動産の管理も不動産管理会社が担うため、それらの費用は経費にできます。
この方式の場合、賃料収入の一部を不動産管理会社のものにできるため、個人の所得の分配が可能になるのです。
サブリース方式の場合、借り上げ料が相場よりも低すぎる場合は税務署にチェックされる可能性があるので注意しましょう。
その③:不動産保有方式
設立した会社に不動産を所有させて家賃収入をすべて会社に計上する方法が、不動産保有方式です。
基本的には、建物の所有権を法人に移し、土地は個人で所有して個人は地代を得ます。
不動産投資の法人化としては、この不動産保有方式が一般的です。
不動産保有方式であれば、家賃収入はすべて法人が取得するため、所得の分散効果は他の法人化スキームよりも高くなります。
また、不動産の移転による相続税対策を狙う場合も、不動産保有方式が適しているでしょう。
不動産投資での法人化にはさまざまな方法があります。
しかし、法人化する場合は設立のための費用が必要となり、法人維持費用も毎年発生するものです。
それぞれの法人化スキームごとにメリット・デメリットも異なるため、法人化すべきかどの方式で法人化するかは慎重に検討する必要があります。
法人化では、相続税だけでなく所得税の節税も期待できますが、収入によっては税金の負担が多くなってしまう点には注意が必要です。
法人化を検討している場合は、早い段階で税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
まとめ
不動産投資の法人化による相続のメリットや法人化スキームについてお伝えしました。
法人化して不動産を会社が所有することで、個人の相続財産に不動産が含まれないため相続税の軽減効果を見込めます。
また、法人化することで所得の分配も可能となり、相続の準備にもつながるでしょう。
法人化する方法はさまざまありますが、法人化にはメリットだけでなくデメリットもあるので、それぞれを比較して判断することが大切です。
この記事を参考に、法人化による相続について理解したうえで法人化を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)
地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。
逆瀬川勇造
30代男性