といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 不動産投資における自己破産までの流れ
- 自己破産前に検討できる3つの法的手続き
- 不動産投資で自己破産するとどうなる?
- 不動産投資で破産してしまった人のよくある事例3選
- 不動産投資で破産しないために押さえておきたい3つのポイント
「不動産投資で自己破産したらどうしよう…」そのような不安があり不動産投資を躊躇している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産投資は、投資額が高額になりさまざまなリスクがあるため、ローンが返済できずに自己破産するケースがあるものです。
しかし、自己破産前にできる手続きや自己破産しないための対策を取ることで、自己破産のリスクを抑えられます。
この記事では、自己破産までの流れや自己破産後にどうなるのかを分かりやすく解説します。
併せて、自己破産しないための注意点や自己破産の具体例も紹介するので、参考にしてみてください。
これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。
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【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!
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不動産投資における自己破産までの流れ
自己破産とは、借金や減収などのさまざまな理由で個人の経済が立ち行かない場合に、裁判所に申し立てて財産を清算する手続きのことを言います。
不動産投資の失敗も自己破産の理由の一つとなるのです。
とはいえ、不動産投資で赤字が出たからと言ってすぐに自己破産となるわけではありません。
自己破産までの大まかな流れは以下の通りです。
- ローン返済が滞る
- 競売される
- 自己破産手続き
①:ローンの返済が滞る
不動産投資する場合、一般的にはローンを組んで不動産を購入するため毎月ローンの返済が発生します。
不動産投資の基本的な仕組みは、家賃収入から必要経費やローンの返済額を差し引いた残りが利益となるものです。
そのため、空室や家賃滞納などで収入が減少、または修繕などで支出が増えてしまうと、収益が下がり収入だけではローン返済ができない場合があります。
その場合は、自己資金でのローン返済となりますが、自己資金が底をついてしまうとローンの返済ができない状況に陥るのです。
ローン返済が滞ると金融機関から督促状が届きます。
返済が滞ったからと言っても1回のみであれば、大丈夫でしょう。
しかし、督促状を無視し滞納が3か月ほど過ぎると金融機関は、不動産投資に失敗したと判断して処理を始めるのです。
金融機関ではローンを回収できないと判断すると、サービサーと呼ばれる債権回収業者に債権を売却します。
サービサーへの債権売却後、サービサーが新たな債権者として債権回収を図ります。
サービサーに債権が移動すると、基本的にローンの残額の一括返済を求められるのです。
②:競売される
サービサーからの一括返済要求に応えられずにいると、サービサーは抵当権を実行し不動産を競売や任意売却することで債権を回収します。
③:自己破産手続き
一般的に競売での不動産売却は、相場よりも低い価格での売却となります。
そのため、売却額だけではローン残債を完済できない可能性があるのです。
この場合、完済できない分は借金として手元に残ってしまいます。
借金を自己資金で返済できれば良いですが、自己資金では返済できない場合に自己破産を選択することになるのです。
自己破産前に検討できる3つの法的手続き
ローン返済が滞り督促にも対応できない場合、自己破産以外にも次のような法的手続きを検討できます。
- 任意売却
- 任意整理
- 個人再生
それぞれ詳しく見ていきましょう。
その①:任意売却
任意売却とは、債権者の合意を得て不動産を売却する方法です。
任意売却であれば、通常の不動産売却同様に市場価値で売却できるので、競売よりも高値で売却できる可能性があります。
また、買主との交渉も可能であるため引き渡し日や契約条件なども、債権者の認める範囲で柔軟に決められるというメリットもあるのです。
一般的に、競売を避けるための手段として任意売却が選択されます。
ただし、任意売却は競売の入札まで間での期間でしかできないので、ローン返済が滞ったら早い段階で検討する必要があります。
また、必ずしもローン残額分以上の売却額になるわけでなく、下回った場合は競売同様借金として手元に残る点にも注意しましょう。
その②:任意整理
任意整理とは、債権者と交渉して借金の負担を減らし返済計画を立て直す手続きです。
自己破産と同じ債務整理の一種となります。
任意整理では、基本的に交渉以後の金利をカットして元本部分のみを3~5年で返済していくようにします。
金利部分しかカットできませんが、不動産投資では借入額も高額になり金利負担も大きいため、金利カットでも毎月の返済額を減らすことが可能です。
任意整理は、裁判所を介さずに金融機関などと直接交渉できるため、生活への制限がなく柔軟な対応がとりやすく、債務整理の中でももっとも選ばれている方法と言えます。
ただし、金融機関と言ったプロとの交渉が必要になるため基本的には弁護士に依頼して手続きするのが一般的です。
その③:個人再生
債務整理の一種である個人再生では、借金の返済ができないことを裁判所に認めてもらい借金を減額してもらいます。
個人再生では、借金の額を5分の1~10分の1程度と大幅に減額でき、減額後の借金を3~5年で完済します。
また、個人再生の場合、住宅や車と言った財産が処分されないというメリットもあります。
しかし、個人再生は債務整理の中でも手続きが煩雑となり、「安定した収入がある」などの認めてもらうための条件も厳しくなります。
弁護士に依頼して手続きしますが、申請しても許可されない可能性も高い点には注意が必要です。
不動産投資で自己破産するとどうなる?
自己破産することにマイナスなイメージがある方も多いものです。
実際に、自己破産するとどうなるのかを具体的に見ていきましょう。
自己破産後の影響としては、次のようなことがあります。
- 借金がなくなる
- 財産がなくなる
- 数年間は新しくローンを組めなくなる
- 一部の資格が失効する
- 官報に掲載される
その①:借金がなくなる
自己破産とは、借金の返済ができないことを裁判所に認めてもらい、借金を免責してもらう手続きです。
そのため、自己破産が認められると額に関わらずすべての借金の返済義務がなくなります。
ローン残債が高額な場合などでは、自己破産のメリットが大きいと言えるでしょう。
その②:財産がなくなる
自己破産すると財産を処分しなければなりません。
不動産や車・貴金属などと言った財産を手放す必要があるのは、デメリットと言えます。
ただし、すべての財産を処分するわけではありません。
生活していくために必要な範囲内の財産については、手元に残せるので最低限の生活は可能です。
手元に残せる財産には、次のようなものがあります。
- 99万円以下の現金
- 生活に必要な家財道具(衣服や寝具・家電など)
また、自己破産後に得た給与や取得した財産などは処分の対象とはなりません。
その③:数年間は新しくローンを組めなくなる
自己破産したという情報は、個人信用情報に事故情報として掲載されます。
個人信用情報とは、クレジットカードの利用や借金といった個人のお金に関する情報が掲載されたものです。
金融機関が融資をする際には、この個人信用情報を照会して審査されます。
個人信用情報に事故情報が掲載されると、いわゆるブラックリスト状態となり新たなローンが組めなくなります。
ただし、事故情報は永久に掲載されるわけではなく、一定期間が経過すると削除されます。
信用情報機関や債務整理の方法によって異なりますが、おおむね5年~10年で削除されるので、削除後は新たにローンを組むことも可能です。
しかし、借入した金融機関で独自に蓄積している社内情報などは削除されないため、同じ金融機関での借り入れは難しいでしょう。
その④:一部の資格が失効する
自己破産すると、一部の資格が失効するため場合によっては失業する恐れがあるのです。
失効する資格には、次のようなものがあります。
- 宅地建物取引士
- 公認会計士や税理士・司法書士
- 公証人
- 警備員など
これらの資格は、自己破産手続き開始後復権するまでの期間取得できません。
また、すでに取得している場合も復帰まで資格を使えなくなるのです。
しかし、すでに取得した資格がなくなるわけではなく資格制限期間が解除されれば、資格を使うことができ新たに取得し直す必要はありません。
その⑤:官報に掲載される
官報とは、法律などの制定や改正情報などを掲載した国が発行する新聞のようなものです。
自己破産した場合、自己破産情報として以下のような情報が官報に掲載されます。
- 事件番号
- 氏名と住所
- 手続き開始日時や内容
- 裁判所名
上記のような個人の情報が詳細に掲載されてしまうため、自己破産したことが周囲にバレてしまう可能性が高くなります。
とはいえ、仕事を理由に閲覧する人はいますが、一般の人で官報を定期的に閲覧している人は多くはないでしょう。
また、官報には掲載されますが、自己破産したことが会社や家族に通知されることはないため、周囲に知られるリスクはそれほど高くはないと言えます。
不動産投資で破産してしまった人のよくある事例3選
ここでは、不動産投資でよくある自己破産の事例について見ていきましょう。
事例としては、次のようなケースが挙げられます。
- フルローンで購入してしまった
- 利回りだけで投資判断してしまった
- 立地選びを間違えてしまった
その①:フルローンで購入してしまった
フルローンとは、頭金なしで物件価格全額をローンで賄う組み方です。
フルローンで借入できれば、頭金を用意する必要がなく自己資金を抑えられるというメリットがあります。
しかし、フルローンは借入額が高額になり、適用される金利も高くなる傾向があるのです。
金利負担や毎月の返済の負担も大きい点に注意しなければなりません。
仮に、3,000万円の物件に投資する場合を見てみましょう。
頭金1,000万円で2,000万円の借入をする場合、借入期間30年・金利3.5%であれば返済額は次のようになります。
返済額:毎月89,808円/年間1,077,696円
対して頭金なしでフルローンの場合は、3,000万円の借入となり返済額は次のとおりです。
返済額:毎月134,713円/年間1,616,556円
このように、フルローンで購入するとその分返済額が高くなることから、キャッシュフローが悪化しやすくなります。
自己資金がない状態でフルローンを組むとキャッシュフローの悪化に耐えられなくなり、自己破産してしまう可能性が高くなるのです。
その②:利回りだけで投資判断してしまった
利回りの高さだけで購入してしまうと、実際には想定の利回りにならず自己破産につながってしまうケースがあります。
そもそも利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」があり、これらは内容が異なる点に注意しなければなりません。
- 表面利回り:年間収入と物件価格のみで算出される利回り
- 実質利回り:表面利回りに経費を加味した利回り
表面利回りは、収入と物件価格のみで算出できる大まかな収益性を表す指標です。
表面利回り(%)=年間収入÷物件価格×100
一般的な不動産広告に記載されている利回りは、この表面利回りになります。
ただし、表面利回りには不動産運営に掛かる費用は考慮されていない点には、注意しましょう。
費用まで考慮した利回りが、実質利回りです。
実質利回り(%)=(年間収入-年間経費)÷物件価格×100
仮に、次の条件で見てみましょう。
年間収入:500万円
物件価格:4,000万円
年間経費:300万円
- 表面利回り=500万円÷4,000万円×100=12.5%
- 実質利回り=(500万円-300万円)÷4,000万円×100=5%
このように、同じ物件であっても表面利回りと実質利回りは大きく異なることがあります。
特に、表面利回りが高い物件には高いなりの理由があるので注意しなければなりません。
表面利回りが高い物件は、基本的に物件価格が安い傾向があります。
物件価格が安い物件では、入居者が確保できないケースや購入後に修繕費が高額になってしまう可能性があるのです。
また、フリーレントなどを利用して入居者を確保しているケースもあります。
一定期間賃料を無料にする契約であるフリーレントでは、購入後にフリーレント期間が終了し退去されてしまう可能性があるのです。
売りにくい物件の場合、上記のように売るために売主が利回りを高くしているケースがあります。
このような物件を購入してしまうと、利回り通りの収入を得られずに赤字となり自己破産になってしまう可能性があるのです。
不動産投資の利回りについては、不動産投資の利回りとは?利回りの種類とそれぞれの計算方法・相場など解説で詳しく解説しています。
その③:立地選びを間違えてしまった
不動産投資では立地選びが重要なポイントとなります。
立地選びを間違えてしまうと、入居者が確保できず収益が得られずに自己破産につながる可能性があります。
立地選びでは、次のようなポイントも必ずチェックしましょう。
- 周辺の環境
- 近隣の商業施設や学校・病院など
- エリアの人口推移
- エリアの開発予定
- 競合状況
また、購入時点では立地がよかったのに、数年たつと悪くなることもあります。
近くの大学が移転してしまった、別のエリアに大型商業施設が建設されたなどで、需要が急激に落ちてしまうケースもあるのです。
不動産投資で破産しないために押さえておきたい3つのポイント
不動産投資で自己破産しないためには、次の3つのポイントを押さえることが重要です。
- キャッシュフローを重視する
- 徹底的にシミュレーションする
- 信頼できる不動産会社をパートナーにする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
その①:キャッシュフローを重視する
不動産投資のキャッシュフローとは、手元に残るお金のことを言います。
手元に資金があることで、収入が得られない場合や突発的な支出が発生した場合などでも安心して対応できるものです。
不動産投資するうえでは、キャッシュフローを正確に把握してできるだけ多くのキャッシュフローがあるような運営を目指すことが重要と言えるでしょう。
不動産投資のキャッシュフローについては、不動産投資でキャッシュフローが重要な理由とは?重視するメリットなど解説で詳しく解説しています。
不動産投資でキャッシュフローが重要な理由とは?重視するメリットなど解説
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その②:徹底的にシミュレーションする
中長期的なシミュレーションを徹底することが失敗しないために重要です。
不動産投資には、空室や金利上昇・老朽化などのさまざまなリスクがあります。
それらのリスクを想定して、厳しめでシミュレーションしていくことが重要です。
また、購入時は良くても築年数が経過することで修繕費の高騰や家賃の値下げが必要になる可能性があります。
これらを見越して計算していなければ、想定外の出費が増えてしまい収支が悪化することもあるでしょう。
不動産投資前に、徹底したシミュレーションすることで、リスクにも慌てずに対処でき、自己破産のリスクも抑えることが可能です。
その③:信頼できる不動産会社をパートナーにする
不動産会社の中には、リスクを考慮せずに不動産投資を勧めてくる業者もいるものです。
特に、知識のない人では、不動産会社の営業トークを鵜呑みにして購入してしまい不動産投資が失敗してしまうケースもあります。
不動産投資では不動産会社はパートナーともいえる重要な相手です。
「リスクやデメリットも説明してくれる」などと言った信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。
不動産投資の営業マンについては、不動産投資は営業マン選びが重要!注意すべき営業テクニックやいい営業マンを見極めるポイントとは?で詳しく解説しています。
不動産投資は営業マン選びが重要!注意すべき営業テクニックやいい営業マンを見極めるポイントとは?
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まとめ
不動産投資の自己破産についてお伝えしました。
不動産投資で失敗してしまうと自己破産しなければならない可能性があります。
しかし、リスクの把握や徹底したシミュレーションなどで、自己破産のリスクは抑えられるものです。
この記事を参考に、自己破産について理解し不動産投資の成功を目指しましょう。
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この記事を書いた人
資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)
地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。
逆瀬川勇造
30代男性