といった悩みにお答えします。
本記事の内容
- 不動産投資における3つの節税効果
- 不動産所得による節税効果
- 固定資産税
- 相続税
「不動産投資は節税になる」そんな話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
近年、サラリーマンの副業として人気のある不動産投資は、節税手段の一つとしても注目を集めています。
しかし、不動産投資がなぜ節税になるのかよく分からないという方も多のものです。
不動産投資で節税する仕組みを理解していないと、節税できずない場合があるので、注意しなければなりません。
この記事では、不動産投資で節税できる税金の種類と節税の仕組みについて、分かりやすく解説します。
これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。
【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!
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不動産投資における3つの節税効果
不動産に投資し、家賃収入や売買差益を収益とする不動産投資。
株式やFXなどのさまざまな投資がある中でも、不動産投資が注目される理由に「節税」があります。
実際に、節税目的として不動産投資している方も多くいるのです。
しかし、すべての人が必ずしも節税できるわけではないので、その仕組みを理解しておく必要があります。
不動産投資で、節税効果を見込めるものとして次の3つがあります。
- 不動産所得
- 固定資産税
- 相続税
それぞれを以下で詳しく解説するので、仕組みを理解していきましょう。
不動産所得による節税効果
土地や建物を貸し付けて家賃収入を得た場合、その所得は「不動産所得」に分類されます。
この不動産所得に対して、「所得税」と「住民税」が課税されます。
不動産所得で節税効果を見込める仕組みは、この不動産所得をマイナスにすることによる所得税と住民税の節税です。
不動産所得は、得た家賃収入そのものが所得となるわけではありません。
収入から必要経費を差し引いた額が、所得となるのです。
不動産所得=不動産収益-必要経費
差し引ける経費としては、次のようなものがあります。
- 固定資産税や都市計画税などの税金
- 火災保険料などの損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費
- ローンの利息部分
- 管理会社への委託管理費
- 税理士や司法書士への依頼料
収益からこれらの経費を差し引いた結果、赤字となった場合に節税効果を見込めるのです。
サラリーマンは損益通算で赤字分の還付を受けられる
不動産所得の特徴に、「損益通算」があります。
不動産所得は総合課税の対象であるため、他の給与所得や事業所得などとの合計額が課税対象となります。
総合課税では、黒字の所得から赤字の所得を差し引く損益通算が可能です。
例えは、給与所得で500万円あり、不動産所得で300万円の損失がある場合、相殺した200万円が課税対象となります。
所得税は、所得額に応じて課税率が異なる累進課税制度が適用され、所得が高くなれば課税率も高くなります。
累進課税の税率は、次のとおりです。
所得額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 626,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
仮に、給与所得500万円だけの場合の所得税は、次のようになります。
所得税=500万円×20%-427,500円=572,500円
しかし、不動産所得の赤字が300万円ある場合は、次のようになるのです。
所得税=(500万円-300万円)×10%-97,500円=102,500円
このように、不動産所得の赤字で黒字の所得額を低くすることで、所得税の節税が見込めます。
サラリーマンの場合、給与から毎月所得税を天引きして納税しているため、不動産所得の赤字を確定申告することで、納めすぎた所得税の還付が受けられるのです。
また、住民税は所得額に関わらず、所得に対して10%の税率で課税されます。
こちらも、所得額を損益通算で低くすることで、住民税の額を抑えることにつながるのです。
不動産投資の損益通算については、不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説で詳しく解説しています。
不動産投資の損益通算とは?具体的な計算方法や法人化した場合の違いなど解説
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減価償却の活用がポイント
不動産所得を赤字にする、大きなポイントが「減価償却」です。
減価償却とは、経年劣化による資産の減少分を経費として計上する、会計上の処理のことを言います。
不動産などの固定資産は、購入したときに一括して経費として計上するわけではありません。
固定資産ごとに定められた期間で、購入額を按分した金額を毎年計上しなければならないのです。
例えば、100万円で購入した固定資産の、償却期間が10年の場合は、毎年10万円を10年間に渡って経費計上していきます。
この仕組みを使うことが、不動産所得での節税に重要になるのです。
減価償却は、減少する資産価値を計上するため実際に出費が伴うわけではありません。
そのため、減価償却を経費計上することで実際には黒字でも、会計上赤字にすることが可能なのです。
減価償却は、法律に定められた法定耐用年数が償却期間となります。
法定耐用年数は、建物の目的や構造によって異なりますが、主なものは次のとおりです。
構造 | 法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
鉄筋コンクリート | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート | 47年 |
また、中古で購入した場合の耐用年数は、次の計算で求められます。
一部経過の場合の耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
耐用年数を超えている場合の耐用年数=法定耐用年数×20%
例えば、木造アパートで築15年の場合は、次のようになります。
耐用年数=(22年-15年)+15年×20%=10年
この場合、購入金額を10年で案分して経費計上できるのです。
不動産投資の減価償却については、不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?で詳しく解説しています。
不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?
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そもそも赤字である点には注意が必要
不動産所得を赤字にして、税金を納めることで節税できますが、そのためには赤字経営であるということが前提です。
減価償却を上手に使って、実際には黒字の場合は大きな問題はないでしょう。
新たに金融機関に融資を依頼する場合も、減価償却前の経営状況で判断されるのが一般的なので、融資にも大きな影響はあまりないものです。
しかし、収益が上がらずに本当に赤字経営では、節税できたとしても投資としては失敗とも言えます。
あくまで、不動産投資の本来の目的は、投資で収益を上げることという点は、忘れずにおきましょう。
不動産投資の赤字については、不動産投資で毎月赤字!赤字にもメリットがあるって本当?よい赤字と悪い赤字の事例を解説で詳しく解説しています。
不動産投資で毎月赤字!赤字にもメリットがあるって本当?よい赤字と悪い赤字の事例を解説
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固定資産税
不動産を所有すると固定資産税の支払い義務が発生します。
固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課せられる税金のことです。
マイホームなどの住居だけでなく、土地や田畑・工場・倉庫などおおよそすべての不動産に対して固定資産税が課税されます。
そのため、投資用不動産を所有している場合も支払わなければなりません。
投資用不動産が一棟マンションの場合はもちろん、マンション一室という場合でも固定資産税は発生するものです。
不動産投資する以上は、かならず毎年の固定資産税納税が必要ということを意識して、投資計画を立てる必要があります。
固定資産税の計算法は、次のとおりです。
固定資産税額=不動産の課税標準額×1.4%
不動産の課税標準額は、公示価格の70%ほどが目安となります。
毎年送付される固定資産税通知書などに不動産の評価額が記載されているので、確認するとよいでしょう。
所有地に建物を建てるようなケースでは固定資産税を節税できる
固定資産税を少しでも抑えるためには、不動産の課税標準額を低くする必要があります。
課税標準額を低くする一つの方法が、所有地に建物を建設することです。
土地を更地のまま所有していると、減額などの措置を受けられません。
しかし、土地に住宅を建てることで「住宅用地の特例」を適用でき、評価額を抑えられるのです。
住宅用地の特例では、人が居住するための建物を建てた土地の税率が次のような減額されます。
面積 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 | 住宅用地で1戸につき200㎡以下の部分 | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
一般宅地用地 | 小規模住宅用地遺体の宅地用地 | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
例えば、500㎡の土地で固定資産税評価額が1,500万円の場合を見てみましょう。
この土地が、更地の場合、軽減措置は何も受けられないので固定資産税は次のとおりです。
固定資産税=1,500万円×1.4%=21万円
この土地に、住宅用の建物を建設した場合、土地の固定資産税は次のようになります。
- 200㎡以下の部分=600万円(200㎡あたりの評価額)×1/6×1.4%=14,000円
- 200㎡超の部分=900万円(300㎡あたりの評価額)×1/3×1.4%=42,000円
よって土地の固定資産税は、56,000円となるのです。
ただし、固定資産税合計額は、建物の固定資産税を含めた額になるので注意しましょう。
住宅用の建物には、マンションやアパートも該当します。
そのため、不動産投資としてマンションなどを土地に建設することで、固定資産税の節税にもつながるのです。
駐車場など建物を建てない場合には特例の適用を受けられない
宅地用地の特例を受けるためには、居住用の建物を建てる必要があります。
そのため、建物を立てていない場合はこの特例を適用できません。
また、建物が建っている場合でも、建物の種類によっては適用できないので注意が必要です。
住宅用地の特例での、「宅地用地」とは次の2つを指します。
- 専用住宅:家屋のすべてが人の居住用の建物のための敷地
- 併用住宅:家屋の一部が人の居住用の建物のための敷地
宅地用地として認められるには、人が住むための建物の必要があります。
駐車場や工場・店舗・事務所・資材置き場などは、宅地として認められないため、この特例を適用できないのです。
ただし、駐車場の場合、アパートなどの建物と一緒に利用している場合は宅地として認められ、貸し駐車場などの場合は認められないなど判断が難しいものです。
特例を適用できるのか判断に迷う場合は、自治体の窓口や専門家に相談したうえで土地の活用方法を検討することをおすすめします。
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相続税
不動産投資は、相続税の節税にも効果が見込めます。
一定の資産を保有している場合、相続が発生すると相続人は高額な相続税を納税しなければならなくなります。
相続税対策していない場合、相続人が相続税の支払いに困惑してしまうというケースもあるのです。
この相続税対策として高い節税効果があると注目を集めているのが、不動産投資でもあります。
不動産は現金より低く評価される?
相続税とは、相続税の対象資産の合計から債務を差し引き、さらに基礎控除を差し引いた金額に対して、一定の税率が課せられます。
この相続税の対象資産の評価額を低くするために、現金よりも不動産が適しているのです。
現金や預金は、額面の金額そのままが相続財産の評価額になります。
それに対し、不動産の評価額は、時価よりも低くなるのが一般的なのです。
例えば、同じ1億円の価値がある現金と不動産の場合を見てみましょう。
現金で1億円を相続する場合、1億円という金額そのものが評価額となり、1億円に対して相続税が課税されます。
一方、不動産の場合は、時価ではなく相続税路線価や固定資産税評価額で評価されます。
相続税路線価や固定資産税評価額は、時価の70%~80%程が目安となります。
そのため、1億円の不動産の評価額は7,000万円となり、この価格に税率が掛けられます。
不動産自体の価値は1億円ですが、相続税の対象が7,000万円まで下がるので、不動産で相続することで相続税の殺税効果が見込めるのです。
他人に貸すことで評価を下げられる
不動産は、自分で所有するよりも他人に貸すことで、評価額をさらに下げられます。
不動産を他人に貸し付ける場合、貸している間は自分で活用することも売却することもできないため、使用に制限が発生します。
この使用制限を考慮し、貸し付けた土地の評価額を下げる仕組みがあるのです。
自分が所有する土地に、マンションやアパートを建設し人に貸している状態を「貸家建付地」と言います。
貸家建付地の場合、相続税の対象となる相続税評価額の計算方法は次のようになります。
相続税評価額=土地の相続税評価額-(土地の相続税評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合は、路線価図で確認できます。
借家権割合は全国一律30%となり、賃貸割合は入居率に比例するものです。
例えば、土地の評価額が1,000万円の場合をみてみましょう。
この建物が、更地の場合は次のとおりです。
土地の相続税評価額=1,000万円
よって、1,000万円に対して相続税の税率が課せられます。
一方、この土地に賃貸マンション(入居率80%/借地権割合60%)がある場合は、次のとおりです。
土地の相続税評価額=1,000万円-(1,000万円×60%×30%×80%)=856万円
このように、賃貸用物件を立てることで土地の評価額の大幅な節税効果が見込めるのです。
ただし、建物を建てた場合、建物に対しての相続税評価額も考慮する必要があります。
建物についても賃貸用の建物の場合は、評価額を抑えられ、次の計算で求められます。
賃貸用建物の相続税評価額=固定資産税評価額-(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)
仮に、1,000万円の評価額のある賃貸マンション(入居率80%/借地権割合60%)の評価額は次のとおりです。
建物評価額=1,000万円-(1,000万円×30%×80%)=760万円
特例の適用でさらに評価を下げられる
相続した土地の相続税評価額をさらに下げる制度として「小規模宅地の特例」があります。
小規模宅地の特例を適用した場合、居住用や事業用の宅地を相続した場合、要件を満たすことで評価額を80%減額できるのです。
この特例では、相続開始前に被相続人と一緒に住んでいた土地を相続した場合、330㎡までの部分に対して80%の減額ができます。
例えば、1,000万円の土地を相続した場合、この特例を適用することで200万円まで評価額をさげられるのです。
小規模宅地の特例は相続のパターンにより、満たすべき要件が異なります。
また、他の特例が適用できるケースもあるので、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
不動産投資の節税効果についてお伝えしました。
不動産投資では、家賃などの収益である不動産所得と減価償却を活用することで所得税・住民税の節税効果が見込めます。
減価償却で、実際には黒字でも赤字で確定申告でき、所得税の還付や住民税の減額が期待できるのです。
ただし、所得税や住民税を節税するには、赤字であることが前提です。
節税にこだわって、赤字経営していては本末転倒ともいえるでしょう。
赤字経営は、不動産投資としては失敗ともいえるので、あくまで不動産投資自体で利益を上げたうえで、節税することを意識することをおすすめします。
また、不動産投資は固定資産税や相続税の節税としても有効的なので、専門家に相談しながら検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を参考に、それぞれの税金や節税の仕組みを理解したうえで、不動産投資を上手に活用して節税できるようにしましょう。
これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。
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この記事を書いた人
資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)
地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
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逆瀬川勇造
30代男性