不動産投資

不動産投資で計上できる経費について解説!活用すべき重要な経費と最小限にすべき経費とは?

不動産投資って何が経費になるのでしょうか?経費にできるものを教えてください。

といった悩みにお答えします。

本記事の内容

  • 不動産投資で利益が出ると税金を納める必要がある
  • 不動産投資で認められる経費
  • 不動産投資で絶対に押さえておきたい2つの経費
  • その他の経費は最小限にしておくべき?

不動産投資の利益には税金が課せられます。

しかし、収益から経費を差し引くことで利益を圧縮し税金を抑えられるのです。

とはいえ、どの費用なら経費として認められるのか、よく分からないという方も多いでしょう。

この記事では、不動産投資で経費として認められる費用について詳しく解説します。

併せて、不動産投資で利益を上げるために押さえておきたい2つの経費についても紹介するので、参考にしてください。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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不動産投資で利益が出ると税金を納める必要がある

不動産投資で利益が出ると税金を納める必要がある

不動産投資の利益は、不動産所得と呼ばれ所得税や住民税の課税対象となります。

ここでは、その不動産所得について、計算方法や考え方をお伝えします。

不動産所得の計算方法

不動産投資では、一般的に家賃収入などを得ることで収益を得るものです。

しかし、この家賃収入=不動産所得というわけではありません。

不動産所得は、次の計算方法で求められます。

不動産所得=総収入金額-必要経費

このように、収入から経費を差し引いた部分が不動産所得となるのです。

そのため、総収入金額や必要経費にどのような項目のお金が含まれるのかを理解しておく必要があります。

総収入金額に含まれるのは、次のような収入があります。

  • 家賃収入
  • 家賃とは別に設定している駐車場代
  • 共益費
  • 礼金など返還が不要なお金
  • 更新料

これらの合計から必要経費を差し引くことで、不動産所得が求められるのです。

差し引ける経費については、以下で詳しく解説するので参考にしてください。

経費を入れることで納税額を安く抑えられる

不動産所得は、所得税と住民税の課税対象となります。

また、不動産所得は給与所得など合算する総合課税の対象となるので、不動産所得が多ければその分、総所得額も大きくなります。

所得税は、所得額に応じて課税率が異なる累進課税であり、所得が高くなるほど課税率も高くなる仕組みです。

累進課税の課税率は次のようになります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

住民税は、所得額に関わらず所得額に対し一律10%課税されます。

もっとも所得が高い人では、所得税と住民税で合計55%もの課税率となるのです。

不動産投資で利益を多く出しても、総所得額が上がってしまうと高い税率で課税されてしまうので注意しなければなりません。

ただし、不動産投資の場合、収益から経費を差し引けることで、所得を抑えることが可能です。

とくに、不動産所得では損益通算が可能というメリットがあります。

損益通算とは、赤字の所得を他の黒字の所得と相殺して申告できる制度のことです。

例えば、不動産所得が300万円の赤字で給与所得が400万円の場合、差し引いた100万円が課税対象となります。

このように、損益通算を利用することで、不動産所得を赤字にして本業の黒字の所得から差し引くことで、所得額を低くして所得税・住民税の節税効果が見込めるのです。

この不動産所得を赤字にするために必要となるのが「経費」といえます。

より多くの経費を計上することで、不動産投資の利益をマイナスにして、税金を減額することが可能になるのです。

不動産投資で認められる経費

不動産投資で認められる経費

不動産投資では、すべての費用が経費として認められるわけではないので、注意が必要です。

経費として認められる項目には、次のようなものがあります。

  1. ローン金利
  2. 固定資産税などの税金
  3. 修繕費
  4. 保険料
  5. 管理費
  6. 仲介手数料
  7. 専門家への報酬
  8. 旅費・交通費
  9. 通信費
  10. 減価償却費

それぞれ見てきましょう。

その①:ローン金利

不動産投資では、金融機関からローンを組んで不動産を購入するのが一般的です。

このローンの返済額のうち、金利部分のみ経費計上できます。

また、ローンを組んだ際の手数料も費用計上可能です。

返済額のうち元本部分は経費計上できないので、注意しましょう。

金利部分と元本部分の金額は、金融機関が準備する返済表などで確認できるので、事前に確認することが大切です。

ただし、不動産所得を赤字にして損益通算する際の注意点として、「土地部分の金利は含められない」という点があります。

返済額のうち金利部分は経費計上できますが、損益通算する場合はその金利部分のうち土地に掛かる金利は含められないのです。

この場合で経費として計上できるのは、「建物」「設備」に対する金利部分となります。

土地・建物・設備の金額の内訳は、売買契約書で確認できるので、金額を把握して金利を計算するようにしましょう。

不動産投資の金利については、不動産投資ローンの金利相場や低金利で融資を受けるポイントなど徹底解説で詳しく解説しています。

不動産投資ローンの金利相場や低金利で融資を受けるポイントなど徹底解説

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その②:固定資産税などの税金

不動産投資する上で納税しなければならない各種税金も費用計上可能です。

次のような税金が経費計上できます。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 利子税

また、不動産投資に使用する車両に対する自動車税・重量税、法人化した場合の法人事業税も計上できます。

ただし、次の税金は計上できません。

  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税

これらの税金は、不動産投資とはかかわりなく発生する税金のため経費計上できないのです。

すべての税金が計上できるわけではないので、注意しましょう。

その③:修繕費

建物や設備の故障やリフォーム・退去に伴う原状回復などの修繕費も経費計上できます。

ただし、修繕の程度によっては経費計上できない場合があるので注意が必要です。

賃貸物件で工事する場合、その費用は修繕費か資本的支出に分かれます。

  • 修繕費:原状回復するための費用
  • 資本的支出:資産価値を上げるための費用

例えば、壁紙の張り直し工事の場合を見てみましょう。

同じ壁紙工事ですが、工事目的や内容が「同じグレードの壁紙への張替え」か「グレードアップした壁紙への張替え」で経費の項目が変わります。

この場合、同じグレードの壁紙であれば修繕費、グレードアップした壁紙なら資本的支出となるのです。

費用項目が、修繕費であれば費用を一括で経費計上できます。

しかし、資本的支出と見なされる場合、一括での経費計上ができず、耐用年数に応じて減価償却費として計上しなければならないのです。

修繕費か資本的支出なのかは判断に迷うケースが多いでしょう。

判断に悩む場合は「(物件の購入額+これまでの資本的支出)の約10%以内なら修繕費」という目安もあるので、参考にしてください。

工事に伴う費用をすべて修繕費として一括計上すると、税務署に指摘される可能性があるので、心配な場合は税理士に相談して判断することをおすすめします。

その④:保険料

物件を所有する際、火災保険や地震保険に加入した場合はその保険料も経費にできます。

また、孤独死などに対応した保険など、大家が負担する保険に対する保険料も費用計上可能です。

費用明細については、加入している保険会社から取り寄せられるので確認するとよいでしょう。

その⑤:管理費

不動産投資の場合、ほとんどの方が入居者の募集や物件管理・入居者対応などを管理会社に委託しているでしょう。

管理会社に委託して物件を管理している場合、その委託料も費用計上できます。

確定申告前には、管理会社から経費計上できる範囲をまとめた明細書が送付されるので確認するようにしましょう。

明細書を作成してもらえない場合でも、年間の委託管理料の明細書で対応できるので確定申告前に準備しておくことが大切です。

また、マンションなどで共有部分の管理のための管理費や修繕積立金を管理会社とは別に支払っているケースもあります。

この場合も、経費計上できるので請求書などで金額を確認するようにしましょう。

その⑥:仲介手数料

入居者が決まるたびに賃貸仲介会社へ支払う仲介手数料も費用計上可能です。

自分で入居者を見つける場合を除き、賃貸仲介会社や管理会社を通して入居者が決まった場合、その都度仲介手数料が発生します。

この費用も、経費として認められるので明細を取っておくようにしましょう。

また、入居者を募集するための広告宣伝費やプレゼントの費用も経費計上可能なので活用することをおすすめします。

その⑦:専門家への報酬

不動産投資では、さまざまな専門家との関りが発生します。

  • 司法書士:登記に関する手続き
  • 税理士:確定申告依頼
  • 弁護士:滞納時などの訴訟手続き

これらの専門家に依頼した場合の報酬も経費計上可能です。

その⑧:旅費・交通費

投資物件を調査するためや不動産会社への訪問、金融機関との打ち合わせなどと言った際の旅費・交通費も費用計上できます。

計上できる費用には次のようなものがあります。

  • ガソリン代
  • 駐車場代
  • 高速道路料金
  • 公共交通機関の運賃
  • 宿泊費

領収書をもらった際にメモすると後から振り返りやすいのでおすすめです。

領収書がない場合でも、内訳が分かる旅費精算所を作成することで費用計上が可能です。

また、不動産投資で車両を使用する場合には、車両の購入代やメンテナンス費用・税金・保険料なども費用計上可能です。

プライベートと兼用する場合は、家事按分することで投資目的分だけ費用計上しましょう。

ただし、不動産投資の際であっても、スピード違反などの反則金や罰金は計上できないので注意しましょう。

その⑨:通信費

不動産投資では、通信費も費用計上できます。

  • スマホやパソコンの購入費
  • スマホの料金
  • プロバイダ料金
  • ソフトやアプリの代金

不動産投資では、連絡手段や情報管理・情報収集などでパソコンやスマホは必須です。

そのため、これらの費用も経費計上できます。

ただし、プライベートでも使用している場合は、家事按分して不動産投資に使用する部分だけを経費計上しなければなりません。

その⑩:減価償却費

減価償却費とは、築年数に応じて目減りする資産価値を経費として計上する会計上の処理のことを言います。

具体的には、物件を取得した際には、購入代金を一括で費用計上するのではなく、償却期間で案分した金額を毎年計上する方法です。

減価償却については、以下で詳しく解説してきます。

不動産投資の減価償却については、不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?で詳しく解説しています。

不動産投資における減価償却について解説!節税に活用するメリットや注意点とは?

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不動産投資で絶対に押さえておきたい2つの経費

不動産投資で絶対に押さえておきたい2つの経費

不動産投資では、多くの経費が発生するものです。

計上できる経費をしっかり理解することで、経費計上額を大きくでき所得を抑得られるでしょう。

ただし、すべての経費を最大限計上すればいいというわけではありません。

経費計上額が多ければ、それだけ手元に残るお金も少なくなるので注意が必要です。

しかし、不動産投資では次の2つの経費を利用することで、手元に残るお金を減らさずに節税効果を高められます。

  1. 青色申告特別控除
  2. 減価償却費

その①:青色申告特別控除

正確に言えば経費とは異なりますが、節税効果を高めるうえで重要なポイントとなるのが「青色申告特別控除」です。

青色申告特別控除とは、青色申告者が利用できる所得控除のことを言い、最大65万円を所得額から控除できます。

青色申告とは一定の簿記を備えてする確定申告のことを言います。

青色申告することで、特別控除の適用や繰越控除などの税制上のメリットがあるのです。

ちなみに、青色申告以外の確定申告のことを白色申告とも言います。

青色申告は誰でもできるわけではなく、開業届を出したうえで事前に税務署に青色申告申請する必要があるので、注意しましょう。

この青色申告の大きなメリットが、青色申告特別控除です。

青色申告特別控除では、以下の控除が適用できます。

控除額適用条件
65万円・複式簿記で記帳し、貸借対照表や損益計算書を揃えて確定申告する
・申告方法はe-Taxを利用した確定申告書の提出または電子帳簿保存
55万円・複式簿記で記帳し、貸借対照表や損益計算書を揃えて確定申告する
10万円・上記以外の方法での確定申告

65万円の控除をうけるには、必要な書類を揃え電子申請(e-Tax)する必要があります。

この控除を適用できれば、大きく所得額を減らせるので所得税の節税効果も見込めるでしょう。

その②:減価償却費

不動産投資で、節税に関する大きなポイントとなるのが「減価償却費」です。

減価償却費は、先述した通り不動産などの固定資産の購入費用を、数年にわたって経費計上できます。

実際には支払っていない経費でもあるため、減価償却を計上することで赤字にしながらも手元にはお金が残っている状況を作り出せるのです。

ただし、減価償却費は不動産の場合、建物のみに適用でき土地には適用できません。

そのため、購入代金の内訳を明確にする必要があります。

基本的には、売買契約書に内訳が記載されているのでその金額を利用します。

内訳は常識の範囲内であれば、売主と買主の合意で決めることも可能なため、購入時には建物部分の割合を高くするよう交渉すると、減価償却費も多く計上できるでしょう。

減価償却費は、建物の構造や経過年数によっても費用が異なります。

購入前には、減価償却費も考慮して物件を選ぶことが重要です。

その他の経費は最小限にしておくべき?

その他の経費は最小限にしておくべき?

減価償却費は実際の出費を伴わない経費のため、最大限活用すべき費用とも言えます。

しかし、それ以外の経費は実際の出費を伴うため、使えば使うほど収支が悪化するものです。

基本的は、減価償却費以外の費用は最小限に抑えるようにしましょう。

節税目的で経費をたくさん使うのはNG

経費を多く計上することで、所得税・住民税の節税効果が見込めます。

とはいえ、節税目的のためと言って経費を必要以上に多く使うのはおすすめできません。

経費を多く使えば税金を抑えられるでしょう。

ただし、抑えた以上の金額の出費を出していては本末転倒と言えます。

不動産投資の本来の目的は、あくまで利益を上げることであり、節税目的ではありません。

本来の目的を見失って出費を多くしてしまうと、不動産投資自体が失敗してしまう可能性もあるので気を付けましょう。

損益通算=お得ではない

不動産投資で節税できる仕組みである損益通算は、不動産所得が赤字であることが前提です。

「損益通算で給与所得を減らして税金を抑えられる」=お得ではないので注意しましょう。

税金を抑えられたということは、不動産所得が単に赤字経営というだけです。

減価償却を利用した赤字であれば問題ないでしょう。

しかし、経費を使いすぎ、収入が少ないといった本当の赤字では不動産投資としては、失敗と言えます。

赤字経営を続けていると、自己資金での手出しや金融機関からの評価が下がるなどのデメリットの多くあるものです。

不動産投資自体の成功を意識したうえで、上手に経費を使って節税することが大切です。

まとめ

不動産投資で経費計上できる費用についてお伝えしました。

不動産投資では、多くの費用を経費計上でき、税金を抑える効果を狙えます。

ただし、必要以上の経費計上はただの赤字経営になる可能性があり、節税以上の出費になる場合もあるのです。

節税を狙うのであれば、減価償却費と青色申告特別控除を活用し、それ以外の経費は必要最低限に抑える方法をおすすめします。

この記事を参考に、経費や節税について理解し、上手に活用して不動産投資を成功させましょう。

これから不動産投資を始めるという方は、以下の記事をご覧ください。

【初心者向け】不動産投資の始め方!7つのステップで徹底解説!

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この記事を書いた人

逆瀬川勇造

30代男性

資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)

地方銀行、不動産会社を経て金融や不動産関連の情報をお伝えするフリーライターとして活動しています。
実務で得た知見を活かして、記事を読まれる方の困りごと解決に役立てられたらと考えています。

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